日本ミステリを読もうと思って手に出したのは、東野圭吾氏のガリレオシリーズの第4作目の作品で長編としては、『容疑者Xの献身』の次の作品に当たります。私としては発表当時の評判はまったく覚えていません。というか東野氏の作品はやたら評判がよいというイメージがありますが、作品に区別がつきません。
作風はデビュー時は赤川次郎と謎解きミステリの融合というか、はっきりした作風が見えず、『眠りの森』では作風をはっきりしようと苦闘しているなあ、と思っていました。その後、トリックそのものによって読者の感情をコントロールするという作風を『白夜行』あたりで確立したのかなと感じました。
私にとって東野氏はあまり読んではいないのですが、好きなのは、動機が好きな『放課後』、内容が意欲的な『どちらかが彼女を殺した』ですね。
本作はその登場人物の少なさという意味で、『どちらかが彼女を殺した』(こちらはフーダニットですが)に似ていますが、どのように殺人を犯したのかを推理するハウダニット・ミステリであり、ほぼ犯人を特定したままで、これはよほど驚きがないとつまらない内容になるのですが、『虚数解』というキーワードを引き出すようなトリックでした。
私としては驚いたのが、ほとんど全編がハウダニットの推理に用いられていることです。アクションや行動がまったくありません。それだけで400ページ以上読者を引っ張るのは、ものすごいなと感じます。というわけで、☆☆☆★というところです。
- 作者: 東野 圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/04/10
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