ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『貧困女子のリアル』沢木文、小学館新書、2016

 貧困というと生まれや環境からどうしようも対策を立てようもないものを浮かべますが、本書はそのなかの一部を記した11名のインタビュー・ルポで、誰もが一歩間違えれば陥るかもしれない事例でしたので、非常に興味深かった。筆者が女性のためか、男性著者の場合と、少し別の面が現れているような気がします。

 個人的には、エピソード10の出版社の雑誌編集の契約社員の人、エピソード11の転職を重ねてブラック企業に努めている人が、身近に似た人がいるためか、もしかしたら、あの人はこんなことを考えているかもしれないという意味で面白かったですね。

 本書の成り立ちとしてはネットでアップした原稿が評判を読んだため、さらにインタビューを重ねて新書化したものだそうで、ネット掲載されたものは紙では売れないと言われますが、私もネット連載を構成し直して単行本を制作したことがあり、そこそこ売れましたし、とくに新書というものは手軽さがそういうものでいい感じがします。下記のようなものは大変ですけどね。

(中略)引き抜かれた出版社に行ったら、そこが超ブラックだったんです。単行本のノルマが月3冊(通常毎月1冊)、営業、企画、販売などすべてやらなければならず……。それに、毎月朝礼があって、前日の営業成績などが悪かった人が女子から吊し上げを食らうんです。(178頁より)

  月1冊でも信じられないのになあ……。 

貧困女子のリアル (小学館新書)

貧困女子のリアル (小学館新書)