ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ブラックサマーの殺人』M・W・クレイヴン,東野さやか訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,2019,2021ーーミステリ的にやられた感をもちました

 もう夜も遅くなってしまって眠いのたけど,書くのを明日に後回しすると,面倒くさくなってしまって,結局は書かない,ということばかり続いているので,本書は結構いい作品だから,さっと記しておきます。

 解説によると,本書は作者のM・W・クレイヴンの第4作目の作品で,ワシントン・ポーのシリーズでは第2作目の作品。第1作目は『ストーンサークルの殺人』でその次に当たります。『ストーンサークルの殺人』はトリックに先例があって,それがあまりにも有名なトリックなので,それがゆえに記憶に残っています。そのトリックを成立させることは,なかなか難しいので,私としては高評価だったわけで,本作も手に取った次第です。

 事件はというと,ポーは6年目に自分の娘を殺したとしてカリスマシェフを逮捕したが,今になってその娘が生きて発見されたという。娘の血液型と一致したというのだ。誤認逮捕を疑われたポーだが,カリスマシェフが殺人を犯したことを確信していた。ポーは再調査のために同僚の分析官や情報のプロ,監察医,病理学者に協力を求めた。

 本書は,魅力的な謎であり,コロンボ警部シリーズのようなハウダニット作品で,そのハウダニットが魅力的で,私は少しやられた感をもってしまいました。読みやすくリーダビリティが高いのも魅力的。

 作者は,あのトリックを使いたくて,それが明かされた時のショックを最大限に読者に与えるためにはどうしたらよいかを考えて,物語を構築したのでしょうね。それが前作のようなフーダニットではなく,ハウダニットというわけで,ミステリ的に☆☆☆☆というところです。