ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『レイチェルが死んでから』フリン・ベリー、田口俊樹訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、2016、2018ーーサスペンスで、スリラーで、サイコもの

 本書は、新人作家のフリン・ベリーのデビュー作にして、2017年のエドガー賞最優秀新人賞受賞作。同時期に『東の果て、夜へ』があり、それを制したものとのこと。

 15年前に姉のレイチェルが殺されたのを発見した妹のノーラが主人公。ノーラは悲しみに暮れながらレイチェルとの思い出や妄想をもって毎日を過ごしつつ、レイチェルに親しい者に接触し犯人探しをしていた。そうしたら…

 現在のノーラの話と過去の思い出のノーラの話が交互に、あるいは境目がなく語られる。そのため、何が事実なのか妄想なのか読者は混乱してしまうが、あまりにもノーラの悲しみの深さにあまり気になりませんでした。

 と考えていたら、サスペンスなのか、スリラーなのか、サイコものなのか、どんどん転換していくところが面白い。あまり謎解き的な要素が少ないのですが、アメリカ人がイギリスを舞台にしているためか、非常に読みやすく(だからコクがない)、好感が持てます。というわけで、ちょっと評価が高めに、☆☆☆★というところです。

レイチェルが死んでから (ハヤカワ・ミステリ文庫)

レイチェルが死んでから (ハヤカワ・ミステリ文庫)