ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2010-01-01から1年間の記事一覧

『バクマン。』など

■『バクマン。 10巻』小畑健, 大場つぐみ,集英社,2010/10 連載会議のシーンが興味深い。今までに連載が立ち上がるシステムは説明されていましたが、決議が覆されるところなどドキドキしましたね。バクマン。 10 (ジャンプコミックス)作者: 大場つぐみ,小畑…

『銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇』『銀河英雄伝説(8)乱離篇』

■『銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇』田中芳樹,東京創元社,2008 ■『銀河英雄伝説(8)乱離篇』田中芳樹,東京創元社,2008 先週から6巻・7巻・8巻を連続読み。まったく展開を知らなかったので、8巻のあのシーンには驚きました。まさか……という感じ。きちんと読ん…

『銀河英雄伝説〈6〉飛翔篇』田中芳樹,東京創元社,1985→2007

本巻は、新銀河帝国の成立によりラインハルトはローエングラム王朝の初代皇帝となったところから始まったわけですが、地球教団のテロ行為、ヤンに対する監視人の暴走、首都の移転などが動き、大きな戦いになる予感を示唆するところです。銀河英雄伝説〈6〉飛…

『まんが学特講――目からウロコの戦後まんが史』みなもと太郎, 大塚英志,角川学芸出版,2010

みたもと太郎氏を講師として、大塚英志氏が聞き役として、大塚氏が抱いていた「トキワ荘史観」とは異なるマンガ史観を解説したもの。私も大塚氏と同じような考えをもっていましたが、本書の貸本劇画から連なるマンガ史観によって、頭の隅っこにぐにゅぐにゅ…

『告白』湊かなえ,双葉社,2008→2010

ミステリとしての評価も高く本屋大賞も受賞したベストセラー。中島監督によるインタビュー形式の解説も面白く、映画も見たくなりました。とにかくリーダビリティが高く、『魔性の殺人』『この町の誰かが』に匹敵するぐらいでした。ミステリと言うよりもリド…

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』歌野晶午,講談社,2007→2010

その5名はネット上で知り合っただけで、お互いの顔も声も本名も知らない。彼らは実際に殺人を犯し、連続殺人、アリバイなどの謎を提示し、他のメンバーがその真相を推理しあうという「殺人ゲーム」を始めた。 中途で解説されているように、犯人が分かってい…

『愛おしい骨』キャロル・オコンネル, 務台夏子訳,東京創元社,2008→2010

『クリスマスの少女は還る』の作者の11作目の作品。私は、『クリスマス』以外は読んだことがないのですが……。 元陸軍犯罪捜査部に所属していたオーレンは、20年ぶりに田舎町に子どもの頃に育てられた家政婦のハンナに請われて帰郷した。オーレンは17歳のとき…

『複眼の映像―私と黒澤明』橋本忍,文藝春秋,2006→2010

脚本家・橋本忍氏の『羅生門』『生きる』『七人の侍』などについて、黒澤明との共同脚本はどのように書かれたかを記した自叙伝。 私は黒澤明についての評論をほとんど読んでいないので無知なのですが、なぜ、『羅生門』『生きる』のような一種文芸的な作品か…

『ノンストップ!』サイモン・カーニック, 佐藤耕士訳,文藝春秋,2010

書評でタイトル通りまさにノンストップの展開で面白いと評判がよかったので、珍しく新刊を購入。 IT企業の営業マンのトム・メロンは、土曜日の午後3時に高校時代の友人のジャック・カリーから電話を受け取った。「助けてくれ」と言ったあと、何者かに襲われ…

『デフレの正体――経済は「人口の波」で動く』藻谷浩介,角川書店,2010

「上半期新書ナンバー1」というオビがあったのと、何よりも著者がずいぶん前に『中央公論』で発表していた論文に感銘を受け、藻谷という人は評判にはならないかもしれないけれど、いつか素晴らしい書籍を発表するだろうと覚えていましたので池袋ジュンク堂…

『神話の力』ジョーゼフ・キャンベル, ビル・モイヤーズ, 飛田茂雄訳,早川書房,1988→2010

神話学の世界的権威のある学者キャンベルの神話に対する考え方をインタビューで語りおろしたもの。もともとテレビ番組の企画だったものを活字に起こしたものらしい。本書は名著だということは、昔の宝島社から出版されていたブックガイドなどから、さまざま…

『勝つために戦え! 監督篇』押井守,徳間書店,2010

前作は読んでいないのですが、本書の続編が書店に新刊に並んでいて、少し読むとやけに面白いため、気軽に読めるインタビュー集として2冊を購入。押井氏がキャメロン、三池崇史、手塚治虫、ヴェンダース、北野武、ヒッチコックなどをテーマに映画監督論を語…

『さよならもいわずに』『志村貴子作品集 かわいい悪魔』

ここのところマンガばかりの感想ですね。活字も読んでいるんですけど。今読んでいるものは分厚いせいか時間がかかって、なかなか終わらないのです。■『さよならもいわずに』上野顕太郎,エンターブレイン,2010/07 新聞か何かの書評で挙げられていて頭に残っ…

『神のみぞ知るセカイ 10巻』『境界のRINNE 5巻』

■『神のみぞ知るセカイ 10巻』若木民喜,小学館,2010 この作品は何故か気になるんですよねえ。ストーリーが優れているか優れていないかを考える前に、それを超えたシンパシーめいたものをもってしまうというか……。桂馬という主人公の、まあエンタメなので極…

『バクマン。 9巻』『鋼の錬金術師 26巻』

■『バクマン。 9巻』小畑健, 大場つぐみ,集英社,2010/08 サイコーとシュージンはギャグマンガの新連載をついに勝ち取り、始めるのだが……。この作品は編集者を肯定的にとらえているのが面白いです。そういえば『サラリーマン金太郎』で出版社編ともいうべき…

『テレプシコーラ(舞姫) 第2部 4巻』『GIANT KILLING 16巻』『ピアノの森 18巻』

最近、購入したマンガ。メモ代わりに記しておくと後日便利なので。■『テレプシコーラ(舞姫) 第2部 4巻』山岸凉子,メディアファクトリー,2010/07 ローザンヌ・コンクール準決戦ですが、六花は風邪によって体調を崩し、1曲を踊ったところで危険を余儀なくさ…

『ゴールデンタイム 1』竹宮ゆゆこ,駒都えーじ,アスキー・メディアワークス,2010

待望の竹宮ゆゆこ氏の新作。つーか、オレ、どんだけ竹宮さんが好きなんだよ。発売日に購入して、読みかけのミステリを中断して、すぐに読み切ってしまうなんて。やっぱりねえ、竹宮さんの短所から長所まで、すべて許せちゃうんだよねえ。どうして、こう書き…

翻訳ミステリの苦境

『本の雑誌2010年9月号』の特集「たちあがれ、翻訳ミステリー」を読んだ。まず、飯田橋のミステリ専門店「深夜プラス1」の閉店のお知らせとその店長のインタビュー記事。私は学生時代よく深夜プラス1には行っていたので、少し淋しいとともに、あの小さな書…

『失踪者』折原一,文藝春秋,1998→2001

折原一氏は本当に久しぶり。『冤罪者』以来です。本作もとても10年以上前の作品とは思えないぐらい古びていません。折原作品は次々と復刊されるでしょうね。けど、本作は長かったので、それがちょっと辛かったですね……。 埼玉県の久喜市で起きた二人のOLと短…

『夏期限定トロピカルパフェ事件』米澤穂信,東京創元社,2006

いわゆる、小市民たるべく振る舞おうとする高校2年生の二人の男女を主人公にする小市民シリーズ第2作目の作品。第1作目を読んでいますが全くストーリーの記憶がありません。主人公二人の面影が頭に残っているだけです。本作品は、4本の連作短編の形をと…

『血の痕跡』スティーヴン・グリーンリーフ, 黒原敏行訳,早川書房,1992→1994

私立探偵ジョン・タナー・シリーズ第8作目の作品。前作が、謎解きが凝っていて評価が高かった『匿名原稿』。本書も読み終えてみると、ハードボイルド小説というよりも私立探偵小説の要素と謎解きミステリの要素が上手く複合しており、なかなかのお勧めです…

『謎まで三マイル』コリン・デクスター, 大庭忠男,早川書房,1983→1993

モース主任警部シリーズ第6作めの作品。ちなみにタイトルの意味はよく分かりません。おそらくは出典があるのではないかと思いますが。 河から上がった死体は四肢どころか首まで切断されていた。死体がもっていた業の半分しか読むことができない手紙から、殺…

『はなれわざ』クリスチアナ・ブランド, 宇野利泰訳,早川書房,1955→2003

本作は傑作だと思います。しかし、他の人に勧められるかというと、なかなかできる作品ではありません。というのは、本作は三人称で説明されているものの、そのテレビカメラのように視点が次々に移動し、それをあまり意識せずに読んでいると、「えっ、ここは…

『小説家という職業』森博嗣,集英社,2010

森氏の小説家としての方法論と小説家をとりまく出版ビジネスについて書かれたエッセイ集。刺激的ではあるけれど、森氏だからこそだよなあ、森氏しか当てはまらないと嘆息すること多い。森氏は小説を発表する際に、1作目よりも2作目、3作目のほうが面白く…

『ポアロ登場』アガサ・クリスティー, 小倉多加志訳、早川書房、1923→2004

こころが疲れてしまい、それを癒すため、端正な短編推理劇を毎日就寝前に一編ずつ読みました。トリックとして一人二役ネタが多く使われています。それでも、短編なので、疑う時間がもてず結構騙されてしまいます。 収録作は以下の14編。「〈西部の星〉盗難事…

『大聖堂〈中〉〈下〉』ケン・フォレット, 矢野浩三郎,新潮社,1989→1991

中巻でようやく大聖堂の建築に着手します。先はまだ長いです。とにかく長かった……。今回、ソフトバンク文庫ではなく新潮文庫の上・中・下巻だったのですが、各巻およそ600頁で全部でおよぞ1800頁。出張があったので、新幹線の往復もありましたが、読んでも読…

『大聖堂〈上〉』ケン・フォレット, 矢野浩三郎訳,新潮社,1989→1991

最近、ソフトバンク文庫版も出版されていますが、あえて新潮文庫版をブックオフで購入。長くて長くて、とりあえず上巻を読んだところ。4〜5年ぐらい前に友人から「とにかく面白い」と語られて、いつか読もうと購入していたのですが、あまりの長さに積ん読…

『ツチヤ教授の哲学講義』土屋賢二,岩波書店,2005

ツチヤ教授が大学一・二年生の学生を対象にした講義をもとにした哲学入門書。非常にわかりやすい。ソクラテス、プラトン、アリストテレス、ベルクソン、デカルト、ウィトゲンシュタインなどについて、シンプルに具体的な例を挙げて語られています。ツチヤ教…

南アフリカW杯2010・日本予選突破

■<W杯:パラグアイ0(5PK3)0日本>◇決勝トーナメント1回戦◇29日◇ロフタス・バースフェルド このようなこともあるのだと信じられない思いでした。岡田監督が代表監督に就任してから、良かったと思えるゲーム内容がまったくなかったので、たいてい…

『“文学少女”と慟哭の巡礼者』野村美月, エンターブレイン,2007

文学少女シリーズ第5作目の作品。いよいよミウと再会する井上心葉くんです。シリーズ4作目まで読んでいて、ミウというのは心葉の影であり架空の人物ではないかと考えていたのですが、4作目の作者のあとがきで書かれていたとおり、心葉の初恋の人という形…