ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『荒木飛呂彦の漫画術』荒木飛呂彦,集英社新書,2015

『ジョジョの奇妙な冒険』の作者による漫画の描き方のマニュアル本。本書では、その内容を『「王道漫画」を描くための「黄金の道」を示しているのですが、荒木氏の作風から鑑みるに、少し違和感をもちました。荒木氏が黄金の道が大切だと繰り返し述べている…

『その女アレックス』ピエール・ルメートル, 橘明美訳,文春文庫,2011,2014,☆☆☆☆★

イギリスのインターナショナル・ダガー賞(2013年)、『このミステリーがすごい!2015』海外部門第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第1位、「ミステリが読みたい!」海外編第1位など絶賛をされたフランスミステリ。新刊にもかかわらずブックオフで…

『あもくん』諸星大二郎,幽COMICS,KADOKAWA/角川書店,2015――現代の夕暮れ怪談

10歳ぐらいの「守君=あもくん」とその父親を中心にしたショートショートホラー集。ホラーというよりも、現代版の怪談ですね。諸星氏らしい短編群です。 例えば、キャンプ場でその側にある「コトロの森」に、あもくんを背に背負って散歩に出かけた父親(名前…

『カインの娘たち』コリン・デクスター, 大庭忠男訳,ハヤカワポケットミステリ,1994,1995,☆☆☆――海外では珍しいアリバイ崩し

本書を100頁ぐらいまで読み進めたところで、前作の『森を抜ける道』を読み飛ばしてしまったことに気づく。本書はモース警部シリーズ全12作中第10作目の作品。 モースは、他の者が担当していた殺人事件――67歳の古代歴史家のフェリックス・マクルーア博士がフ…

『逮捕されるまで――空白の2年7カ月の記録』市橋達也,幻冬舎,2011

どうやったらこの日本で2年以上警察から逃げることができたのか、また逃げているときの心情はどうだったのか、に興味をもって、ブックオフ100円コーナーで購入。例えば、なるべくカメラに写らないようにコンビニの前を通って逃げなかったことなど、なかなか…

『刑事さん、さようなら』樋口有介,中公文庫,2011,2013,☆☆☆★――タイトルが怖い

樋口氏の第65回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補作。タイトルがちょっと変で気になっていましたが、読後になると、後で内容を反芻できる、なかなかよいタイトルだということがわかります。おまけにカバーイラストも同じ効果を与えている、…

『雑談力が上がる話し方―30秒でうちとける会話のルール』齋藤孝,ダイヤモンド社,2010

自分がコミュ障なので少し役に立てばいいなあと思ったこと、発行から少し時を過ぎてベストセラーになった理由を知りたかったことから手に取りました。 ベストセラーになった理由としては、うまく時代とマッチしたことでしょうか。斉藤先生としては、たくさん…

『髑髏城』ディクスン・カー, 宇野利泰訳,創元推理文庫,1931,1959――二つの城,二人の探偵,二つの死体の謎

カーの第3作目の作品。パリの名探偵バンコランを主人公にした作品で、バンコランが若年であるためか、カー独特のアクが少なくて読みやすい作品。しかも道具立てがわかりやすすぎて、江戸川乱歩や横溝正史にもろな影響を与えたようにも見えます。 ベルギーの…

『弱いつながり―検索ワードを探す旅』東浩紀,幻冬舎,2014

ネットは結局自分の興味のあるところだけを見るようになるため、視界が広がったようにみえて、実は狭くなっているといいます。それに対抗するには、観光する者として、自分の肉体をもっていくことが有用である。確かに一理あるかなと思います。しかし、それ…