ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『逃亡者』折原一、文春文庫、2009、2012ーー逃亡し続けるのは難しい

折原一氏の作品は何を読んで何を読んでいないか、わからなくなってしまいましたが、おそらく半分ぐらいは読んでいるかと思います。そして読むたびにいつも思うのは、 「なんて上手い文章なんだろう」ということ。叙述トリックを中心とした作風が求めた文体な…

『最終章』スティーヴン・グリーンリーフ、黒原敏行訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2000、2002ーー熱狂的な愛読者をもつ作家が爆弾で襲われる

私立探偵ジョン・タナーシリーズ全14作中14作目の作品でラスト。原著は2000年ですからなんと19年前の作品ですね。これで新作が読めないとなると厳しいですね。 このシリーズは、ネオ・ハードボイルド小説として始まりながら、次第に普通に私立探偵+謎解き小…

『殺す者と殺される者』ヘレン・マクロイ、務台夏子訳、創元推理文庫、1957、2009ーーむしろ2000年以降に読んだほうが面白い

ヘレン・マクロイ全31作中17作目の作品。後期の作品かと思っていましたが、意外と中期の作品で、おそらく当時としては野心的で、ここまで翻訳が遅れたことのは意外性の極限を狙って滑ってしまったが、現在改めて読むと面白さを感じることができる作品といえ…

『誰よりも狙われた男』ジョン・ル・カレ、加賀山卓朗訳、ハヤカワ文庫NV、2008、2014

ジョン・ル・カレの第21作めの作品で、私にとっても久々です。 スパイ小説華やからしき頃は私のようなミステリ者もスパイ小説を読んでいたものです。しかしいつの間にやら読まなくなってしまった。ル・カレなどもその筆頭で、まずは名作の『寒い国から帰って…