ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2012-12-01から1ヶ月間の記事一覧

今年のベストのピックアップ!

今年、印象に残った作品は以下の通り。 『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』道尾秀介,講談社文庫,2008→2011 『湿地』アーナルデュル・インドリダソン, 柳沢由実子訳,東京創元社,2000→2012 『熱い十字架』スティーヴン・グリーンリーフ, 黒原敏行訳…

『海街diary 5 群青』『宇宙兄弟(19)』

今年最後の更新は、今年印象に残ったマンガということで、今更感のが高いのですが、以上の2作品を挙げます。2作品とも構成が素晴らしく作者の掌に喜んで乗ってしまいました。『海街』は向田邦子の作品を、『宇宙兄弟』はちばてつやの作品を思い起こさせます…

『理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性』高橋昌一郎,講談社現代新書,2008

理性の限界とは、人間が認識しうる物事はどこまでなのかを議論することらしい。本書は、シンポジウム形式で、会社員、数理経済学者、哲学史家、運動選手、生理学者、科学社会学者、実験物理学者、カント主義者、論理実証主義者、国際政治学者などが議論した…

『フランキー・マシーンの冬』ドン・ウィンズロウ, 東江一紀訳,角川文庫,2006→2010

『犬の力』で傑作をものにしたウィンズロウの10作目の作品。『犬の力』よりは軽いタッチになっていますが、だらだらな文体のアメリカのベストセラー作品と異なり、普通と比較すればシンプルな文章、重いタッチでした。 62歳の老殺し屋フランキー・マシーンは…

『マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気』『マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼』『マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮』冲方丁,ハヤカワ文庫JA,2003

SF大賞を獲得した近未来サイバーパンクSF小説。『ニューロマンサー』を中途で挫折したわたしには、荷が勝ちすぎました。筋は追えるものの面白さを十全に受け止めることができませんでした……。マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文…

『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』道尾秀介,講談社文庫,2008→2011

道尾氏第8作目の作品。初出は『メフィスト』に連載されたもの。第140回直木賞候補、第30回吉川英治文学新人賞候補、第62回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)受賞作とかなり評価をされています。 主人公の詐欺師二名のキャラクターにリアリティが…

『湿地』アーナルデュル・インドリダソン, 柳沢由実子訳,東京創元社,2000→2012

アイスランドを舞台にした警察小説シリーズ翻訳第1作目にして『ハヤカワミステリマガジン』版ベスト10の第1位の作品。まあそれだけの作品でした。本書のようなしっかりした犯罪者像を提示されると、サイコミステリが作者の安易な逃げにしか感じなくなります。…

『隣の家の少女』ジャック・ケッチャム, 金子浩訳,扶桑社ミステリー,1989→1998

スティーヴン・キングが絶賛したサスペンス・ミステリ。サイコパスものの先駆けといってよいのでしょうか? スーパーナチュラル的な要素はなく、異常なエピソードがじわじわと重ねられ、読者の心が締めつけられます。 主人公の男の隣の家に両親を交通事故で…