ミステリを読む マンガを語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。専門書について語らないのでタイトル変えました…

『目には目を』新川 帆立、角川書店、2025――綱渡りをしているかのような

昨年のいくつかのランキングでベスト10に入っていたので、おそらくは新しいアイデアがうまくいったミステリなのだろうと予測して読んだら、まさしくその通りだったミステリ。 とにかく読者の予想を裏切る展開にすることを徹底している。そしてその試みは成功…

『未来を照らす、灯りをつくる。: アニメの制作会社が自立するために~アニメーション制作会社・P.A.WORKS 25年物語』株式会社ピーエーワークス (著)、地域発新力研究支援センター、2025――アニメ会社の変化する社会に合わせた一般企業化

アニメ制作会社のP.A.WORKSの作品解題などを含むノンフィクション物語かと思っていたら、P.A.WORKSの経営をどのように行ってきたか、を述べているもので、ビジネス書に近い。 日本の企業はデジタル機器の導入されて、インターネットが普及してから社会が変わ…

『夜が少女を探偵にする』マリー・ティアニー、能田 優訳、新潮文庫、2024、2026――ミステリじゃない

英国作家の処女作。タイトルがいいし、表4のあらすじも面白そうで、賞の候補になるなどしているので、新作ながら手にとりました。 とはいうものの、ミステリではなく、単なるサスペンス小説でした。何も考えずに読めるぐらい非常に読みやすく、リーダビリテ…

『プロジェクト・ヘイル・メアリー 上・下』アンディ・ウィアー、小野田和子訳、ハヤカワ文庫SF、2021、2026

書店に置かれているのをみて、読みやすそうなSFならば読んでみるかと久しぶりのSFなんだけど、やはり長くSFを離れていると、というか、『三体』と同じで、「未知との遭遇」もので、このネタにあまり魅力をもたない私には厳しかったけど、本書はそれプラス冒…

『崑崙奴』古泉迦十、星海社FICTIONS、 2024――唐代の不可解な連続殺人事件

『火蛾』の作者の24年ぶりのデビュー2作目。ミステリというよりも、江戸川乱歩や京極夏彦、『薔薇の名前』のような幻想忌憚的な面白さで読ませる貴重な作者といってよいだろう。 舞台は古代の中国の唐の時代、腹を十文字に切り裂かれ、心臓と肝臓が抜かれて…

『本を書く技術 取材・構成・表現』石井光太、文藝春秋、2024――ノンフィクションの書き方マニュアル

文章術の書籍かと思っていたら、実際に読むとノンフィクションの書き方の書籍でした。 ノンフィクションを検索してみると「架空の創作(フィクション)ではなく、実在の人物、出来事、事実、記録に基づいて書かれた文章や制作された映像作品」とされています…

『「知」のソフトウェア』立花 隆、講談社現代新書 722、1984

『乱歩賞作家の創作術』で取材の仕方(だったと思う)を学ぶために紹介されていた本。サブタイトルに「情報のインプット&アウトプット」と書かれているように、どのように情報を収集するかノウハウが書かれています。しかし、いかんせん、古いと感じます。 …

『球形の荒野』松本清張、文春文庫、1975、2003――不完全さが魅力の小説

松本清張の比較的初期の長編小説。正直言ってミステリではなく、いろいろ不明のまま終わるけど面白い。 売れっ子で多数の連載を並行してかかえていており、その一つの本作も「オール読物」で連載だったためか、まとまりというのがあまりなく、引きが強く、一…

『乱歩賞作家の創作術:エンタメ小説の書き方 初心者ガイド』高野和明、講談社文庫、2025――取材とストーリーテリングの重要性

『13階段』で乱歩賞受賞した作家のエンタメ小説の書き方ガイド。ミステリではないことがポイントです。特徴としては、元脚本家であるということで、ほかの創作術のものとは異なるのが、資料・取材とストーリテリングの重要性を述べていることです。取材の仕…

『アメリカ彦蔵』吉村昭、新潮文庫、1999、2001――日本語新聞を初めて発行した男

ミステリが読めなくなるとほかのジャンルに手を出しますが、吉村昭は最近になって読むようになった作家です。本作も古いのかなと思っていたのですが、1999年が単行本発行ということは、それほでもないか。 Geminiによると、本作は、幕末に遭難してアメリカ船…

『失われた貌』櫻田智也、新潮社、2025

『蝉かえる』の著者の初長編で各ミステリランキングで上位だった作品。私がスランプだったためなのか、登場人物の見分けがつかず、物語に入り込めませんでした。というわけで☆☆☆★といったところです。たぶん『蝉かえる』でも同じような感想を持ったと思いま…

『空に浮かぶ密室』トム・ミード、中山宥訳、ハヤカワ・ミステリ、2025――観覧車殺人事件の謎をあなたは解けますか?

『死と奇術師』のトム・ミードの第2作目の作品。ちなみに第1作目も読んでいるけど、内容はまったく覚えていません。しかし書店でポケミスで300頁弱で謎解きミステリであれば手に取らない余地はありません。ただ一つのマイナスポイントは舞台が1938年である…

『凡夫 寺島知裕。―「BUBKA」を作った男』樋口毅宏、清談社Publico、2025

書名通り「BUBKA」の創刊編集長のノンフィクション。 非常に陰鬱なノンフィクションで、読むことがやめることができないほど面白いけど、読めば読むほど心が落ち込んでいきました。書かれた理由はわかるけど。 凡夫 寺島知裕。 「BUBKA」を作った男 作者:樋…

『言語化するための小説思考』小川哲、講談社、2025――ベストセラーの理由は?

池袋ジュンク堂でベストセラーとして紹介されていた新書です。――ちなみに講談社現代新書ではないんですね。いわゆる文芸書なのでしょうか? 本書は小説家が小説を生み出すときにどのようなことを考えているかを説明しています。――エッセイなんだろうか? な…

『ハウスメイド』フリーダ・マクファデン、高橋知子訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、2022、2025――シンプルで大胆なサスペンスミステリ

著者のフリーダ・マクファデンは現役の脳外科医で、最初はkindleの自費出版から始めて現在30冊ほどの作品がある作家で、本書は初翻訳。ようするに自費出版でじわじわと評価を受けてきたたたき上げの作家というのだろうか。どおりでデビュー作っぽくなく、あ…

『ミステリマガジン2026年1月号』早川書房、2025/『このミステリーがすごい! 2026年版』宝島社、2025

『ミステリマガジン2026年1月号』『このミステリーがすごい! 2026年版』ともに毎年の年間ベストミステリアンケートの号です。毎年のことですが、意外といったら意外な結果であり、さもありなんとも、残念とも思うこともあります。 私の希望としては、過去や…

『締切と闘え!』島本和彦、ちくまプリマー新書 504、2025――締切と能力開発

島本和彦氏というクリエイターの締切を守るためにはどうしたらよいか、を解説するとともに、どのようにしたら自分の能力を開発し、折り合って利用してクオリティアップをしてきたかを示す新書。以下はおそらく正しいでしょうね。 その当時の『少年サンデー』…

『神の光』北山猛邦、東京創元社、2025――館消失は幻想忌憚

北山猛邦氏の新刊。初めての北山作品です。本作は建物消失をテーマにしたミステリ5編が収録されています。静かな語り口、読みやすい端正な文体で幻想的な物語を語っていきます。でも謎解きというよりは、幻想忌憚という感じだったかな。まあ謎解きミステリは…

『デスチェアの殺人』 M W クレイヴン、東野さやか訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、2024、2025――クレイヴンの白井智之化

ワシントン・ポー・シリーズ全7作中第6作目の作品で、翻訳最新刊。 クレイヴンの白井智之化ともいっていいくらい作風が変化しました。もともと謎解き要素が満載で、どんでん返しがきちんとある、少しクラッシックな作風で人気が出ましたが、本作は思いっきり…

『氷のような手』E・S・ガードナー、小笠原豊樹訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、1962、1983――部屋に行ったら死体と女性

ぺリイ・メイスン・シリーズ全82作中68番目の作品。『私立探偵マニー・ムーン』がやけに面白かったから、久々のぺリイ・メイスン・シリーズを手に取りました。 このシリーズって、すでに忘れられていますね。内容が幾分アクチュアルな面白さだから、時代を過…

『9人はなぜ殺される』ピーター・スワンソン、務台夏子訳、創元推理文庫、2022、2025――新作ミステリの作り方の一つが換骨奪回

ピーター・スワンソンの翻訳の新作。『そしてミランダを殺す』だけ読んでいて、あまりいい印象がなかったので、評判がいいと知りつつも、今まで手に取らなかったけど、本作は『そして誰もいなくなった』のオマージュということで手に取りました。 アメリカ各…

『日本がバカだから戦争に負けた―角川書店と教養の運命』大塚 英志、星海社新書 116、2017――角川書店はオタクそのものだった

井上伸一郎氏の『メディアミックスの悪魔―井上伸一郎のおたく文化史』が表の角川書店史だとしたら、本書は裏角川書店史という位置づけともいえます。あの角川のメディアワークス分裂騒動の当事者の一人が大塚氏であり、その気分が書かれています。 筆者は「…

『夜明けまでに誰かが』ホリー・ジャクソン、服部京子訳、創元推理文庫、2022、2025――秘密を告白させるには閉じ込める

初めてのホリー・ジャクソンである。実は初翻訳の時に評判がよかったので購入はしたのだけれど、最初の数ページを読んだところで、風景描写が少なく写実的でなく、内容があまりにも頭に入力されないので、「自分には合わない」とすぐに読むのをやめてしまっ…

『私立探偵マニー・ムーン』リチャード・デミング、田口俊樹 (訳)、新潮文庫、2025――ああ、懐かしき軽ハードボイルドミステリ!

著者のリチャード・デミングは『ブラックマスク』の後期にデビューしたアメリカのミステリ作家。訳者あとがきによると、ハードボイルド、犯罪小説、謎解き、サスペンス・スリラー、冒険小説、ウエスタン、歴史小説などのいろいろなジャンルのミステリ、ハリ…

『PRIZE―プライズ』村山 由佳、文藝春秋、2025――編集者はしょせんサラリーマンなんです

日本のいわゆる大衆小説で、エンターテインメント的な、そして直木賞を取りたいと思っている女性作家が主人公ということで、たまにはこのような本屋大賞的な小説もいいかな、と思って手に取りました。 本屋大賞を取り、ベストセラー作家の天羽カインは直木賞…

『ボクは漫画家もどき―イケてない男の人生大逆転劇』三田 紀房、講談社、2024――どのようにして週刊連載2本を同時期に行っていたか

『クロカン』『ドラゴン桜』『アルキメデスの大戦』などの作者の三田好房さんの自伝。私は三田さんのマンガは結構読んでいて、「偉大なるB級漫画家」だと思います。これは、いわゆる中間小説的な物語と演出をしているという意味で、非常に貴重な作家だと思い…

『マーブル館殺人事件』アンソニー・ホロヴィッツ、山田 蘭訳、創元推理文庫、2025、2025――今後忘れなさそうな犯人像の最高作

ホロヴィッツの最新刊。原著と同じ年に翻訳本を発刊ということは、いかに人気があることがわかろうというもの。本書は、編集者スーザン・ライランド シリーズの3作目。『ヨルガオ殺人事件』の続きでネタバレをしていると冒頭に注意書きされていますが、思い…

『宣伝は差異が全て 邪神ちゃんドロップキックからマーケティングを学ぶ』栁瀬一樹、太田出版、2024――誰でもできる異形のプロモーション(いや、できない!)

アニメ「邪神ちゃんドロップキック」のプロモーションについて解説した書籍。私は『邪神ちゃん』をお金をかけず楽しんできた邪教徒で、アニメは全部見て、YouTubeでの宣伝は気が付いたときに見ていました。 とくに最も面白かったのは、本書で早すぎたVtuber…

『まぐさ桶の犬』若竹七海、文春文庫、2025――上流家族の悲劇

女探偵・葉村晶シリーズ第9作目にして最新作。このシリーズはディック・フランシスやギャビン・ライアルのテイストがあって、本書のタイトルもロス・マクからとっているなど、「この手があったか」と思わせるネタがあって愉しいので、とりあえず新作は読むこ…

『漫画ビジネス』菊池健、クロスメディア・パブリッシング、2024――漫画ビジネスはどこまで拡大するのか?

著者は、私にとっては、2010年からNPO法人が運営する「トキワ荘プロジェクト」ディレクターをしていた人ですね。今は同法人を退いて離れているようです。トキワ壮プロジェクトはテレビのノンフィクション番組で観たことあります。このようなプロジェクトを立…