ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『甦った女』レジナルド・ヒル, 嵯峨静江訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,1992→1997.

訳者あとがきによると、レジナルド・ヒル20作目かつダルジール警視シリーズ12作目の作品。本作は27年前のクリスティの小説のような殺人事件の再捜査をするところから始まります。私は、ここのところ続いて昔の事件の再捜査というミステリを手に取っているこ…

『暇と退屈の倫理学』國分功一郎,朝日出版社,2011.

昨年、書評などで評判になった哲学書。人間は物質的に豊かになるにつれて、生きるのに全面的に使わざるを得なかった時間に余剰が生まれた。それを「暇」という。さらに、行きすぎた資本主義がその暇を奪い合っている。「労働者の暇が搾取されている」(23頁…

『皆殺し』ローレンス・ブロック, 田口俊樹訳,二見文庫,1998→2006

マット・スタガー・シリーズの第14作目の作品。だんだん残りが少なくなってきました。 前作『処刑宣告』までは、ハードボイルド+謎解きミステリの融合をはかるというか、ハードボイルドを物語として成り立たせるために謎解き要素を取り込んだように感じまし…

『迷路館の殺人』綾辻行人,講談社文庫,1988→1992.

本書は「新本格ムーヴメント」の第一人者、綾辻行人氏の第3作目の作品。私は新本格の流れは掴んではいたものの、決して系統的に読んでいない、決してよい読者ではありません。それは、このムーヴメントが起きた頃は、謎解きミステリから興味が離れていってし…

『映像の原則 改訂版』富野由悠季,キネマ旬報社,2011

富野氏の映像制作に当たっての基本テキスト。「画(え)の動きそのもので流れているもの」である映像がどのような特性があるか、映像・時間・物語(お話)の関係、面白さはどこから生まれるかなど、ベーシックなことが書かれています。 アニメをみていると、…

『シティ・オブ・ボーンズ』マイクル・コナリー, 古沢嘉通訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,2002→2005

マイクル・コナリーの刑事ハリー・ボッシュ・シリーズ第8作目の作品。20年前という過去の殺人事件を捜査します。 散歩中の犬が丘陵の森の奥から戻ってくると人骨を加えていた。その骨を検査してみると20年前の10歳の子どものものだった。ボッシュは丘の上で…

『ピース』樋口有介,中公文庫,2006→2009.

新作『刑事さん、さようなら』で第65回日本推理作家協会賞候補作になった樋口氏の少し前のノンシリーズ作品。文庫になって書店のポップ広告から評判を呼び発行25万部のベストセラーになったとうかがって手に取りました。というのは、樋口氏の作風は、一部の…