ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ (著),友廣 純 (訳) ,早川書房,2018,2020ーーミステリではなくロマンス小説

偶然,『透明人間は密室に潜む』と同じ 『ハヤカワミステリマガジン ミステリが読みたい! 2021年度版』で3位,『このミステリーがすごい!2021年度版』で2位の作品で,春先から書評で好評であり,かなり期待したましたが,勝手に失望しました。 というのは…

『透明人間は密室に潜む』阿津川辰海,光文社,2020ーー読者を選ぶ作品

『ハヤカワミステリマガジン ミステリが読みたい! 2021年度版』で3位,『このミステリーがすごい!2021年度版』で2位の作品で,かなり期待したましたが,めちゃくくちゃ読者を選ぶ作品でした。そして私はその対象者ではありませんでした。 中編が4篇収録さ…

『あの子の殺人計画』天祢 涼,文藝春秋,2020ーーこういう犯人像を謎解きミステリにもってくるのは難しい

『ハヤカワミステリマガジン ミステリが読みたい! 2021年度版』で7位,『このミステリーがすごい!2021年度版』で16位の作品で,かなりの評価を受けているといっていいでしょう。書店で手に取ったとき,全部で276頁という薄さに読む気になりました。短い長…

『ストーンサークルの殺人』M・W・クレイヴン,東野さやか訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,2018,2020ーー犯人の意外性はとびきり

本作は作者のM・W・クレイヴンの初の翻訳作品。どうやら三作目の作品にして, 英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールド・ダガーを受賞作。書店・書評などとともに,イギリスにはストーンサークルがたくさんあり(てっきり有名なストーンヘンジ1つだと思って…

2020年度のミステリランキング『ミステリマガジン 2021年 01 月号』『このミステリーがすごい! 2021年版』

今年のミステリランキングが出されました。毎年ながら,こういうのを読むと,編集者や書評家,作家など仕事でないにもかかわらず,新刊を追っていく人たちというのは,すごい人たちだなあと感心します。 読んでみたい興味があるミステリは,昔よりどんどん少…

『希望荘』宮部みゆき,文春文庫,2016,2018ーー移動する私立探偵

『誰か』『名もなき毒』『ペテロの葬列』に続く杉村三郎シリーズの第4弾。前作で心に傷を負い仕事を失った杉村は私立探偵事務所を開設する。その経緯を含めた4つの事件を中編で収録したもの。タイトルはそれぞれ「聖域」「希望荘」「砂男」「二重身(ドッペ…

『ノースライト』横山秀夫,新潮社,2019ーーバブル後の没落と再生

『クライマーズハイ』『64』の横山氏の最新刊。ミステリではないけれど,書評などで評判がよいので購入しました。 結論からいいますと,私には合わなかったな,と感じました。この文体は『クライマーズハイ』『64』でしたら,己の不屈の精神を呼び起こすスト…

『漫画家本SPECIAL スピリッツ本』川崎ぶら (監修), 輔老 心 (著),少年サンデーコミックススペシャル ,2020ーー雑誌の始まりと終わり

私は昔はスピリッツ子だったので,購入しました。勢いのあった創刊から週刊化までのことが多く書かれているのが嬉しい。昔「スピリッツ」が個人的なナンバー1の雑誌だったときがあったので,田舎で売れている「ヤンマガ」のほうが売れていると知ったときはシ…

『網内人』陳 浩基, 玉田 誠訳,文藝春秋,2017,2020ーーインターネットが導く犯罪

陳浩基氏の『13・67』の次の新作。よく考えてみれば『13・67』もそうだったけど,タイトルから内容を類推するのが難しいね。これは原著であれば,そうでもないのかもしれないけど。 とにかく2段組みで分厚くて大変だけど,慣れてしまえば訳文もこなれている…

 『弁護士ダニエル・ローリンズ』ヴィクター・メソス,関麻衣子訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,2018,2020ーーこのようなことが現実にアメリカで起こるのか

アマゾンのレビューで評判がよかったので読んでみた作品。 作者は弁護士で,小説家デビューが2011年で現在まで50作以上あるという。ということは,ガードナーのように作風的には軽いものだろう,と考えたけど,半分想像通りでした。 とにかく展開がはやく,…

『死亡通知書 暗黒者』周 浩暉 (著), 稲村 文吾 (訳),ハヤカワ・ミステリ,2014,2020ーー著者の夢のミステリにのせて

kindle版ではなくて,ポケミスで読んだんだけど。しかし,ポケミスばっかり読んでるけど,新書という本当に持ち歩きに最適な大きさで,組版,用紙などがいいのわからないけど,読みやすくて,いいね。目に負担なく読むことができる。『三体』もポケミス版で…

『念入りに殺された男』エルザ・マルポ, 加藤かおり訳,ハヤカワ・ミステリ,2019,2020ーー殺人犯を仕立て上げるコントミステリ

本書は,昨年原著出版,今年翻訳という超スピード翻訳で出版されたフランスミステリ。『果てしなき輝きの果てに 』も今年原著・翻訳出版でしたから,出版社も大変だ。それともITで翻訳スピードが上がったのか。 翻訳してテキストを入力するだけでも時間がか…

『果てしなき輝きの果てに 』リズ・ムーア,竹内要江訳,ハヤカワ・ミステリ,2020,2020ーーリーロイ・パウダー警部補シリーズを好きな人は読んでみていいかも

このコロナ禍のなか,小説はiPadを購入したことで,電子書籍が中心となり,少し昔の作品を再読していたため,更新をしていませんでしたが,読んだ本の紹介や感想だけでなく,その日のよしなしごとを,たまには記しておきます。 本書は書評を読んでの購入で,…

『ピアノ・ソナタ』S・J・ローザン、長良和美訳、創元推理文庫、1995、1998ーー老人ホームでの殺人

リディア・チン&ビル・スミスシリーズ第2作目で、1996年シェイマス賞長編賞受賞作。第1作目は中国女性のリディアが主人公だったけど、本作は男性の私立探偵のビル・スミスが「わたし」であり主人公。この理由はわからないけど、いろいろな事件を対象にしたい…

『流れは、いつか海へと』ウォルター・モズリイ、田村義進訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2019ーーすべての陰謀は流れゆく

ウォルター・モズリイは処女作の『ブルードレスの女』を新刊で読んで失望して以来読んでいない。その処女作は面白くなかったからだ。しかしアメリカで評価を受けているということは翻訳されたもの以外のことが評価されていると感じた。たとえば文体や会話な…