ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2024-01-01から1年間の記事一覧

『象牙色の嘲笑〔新訳版〕』ロス・マクドナルド、小鷹信光、松下祥子(訳)、ハヤカワ・ミステリ文庫、1952、2016ーー後半の怒涛の展開は一気読み

私立探偵リュウ・アーチャー・シリーズの第4作目の作品。あまり初期と思っていなったけど、比較的初期作でした。前に『悪い男』をロス・マク的と書いたけど、本当にそうだったかなと確かめたくて手に取りました。本作は、昔、読んでいると思いますが、新訳さ…

『「少年ジャンプ」黄金のキセキ』後藤広喜、ホーム社、2018

著者は『少年ジャンプ』の創刊号から編集者としてかかわり元編集長の回顧録。後藤氏といえば、平松伸二氏の自伝漫画『そしてボクは外道マンになる』で主人公の初代担当で登場されています。『ジャンプ』の編集者の回顧録はおそらく3冊目で多いですね。それだ…

『悪い男 ―エーレンデュル捜査官シリーズ』アーナルデュル・インドリダソン, 柳沢由実子(訳)、東京創元社、2008、2024ーーストーリーはシンプルで、複雑なテーマをもち、謎解き要素もある職業物

新作が出たら読む作家は幾人しかいませんが、アーナルデュルはそういう作家のひとり。過去作の感想にも書いているかもしれませんが、筆致に悲劇を描くロス・マクの残り香があるので、それだけでも価値があるシリーズです。読んでいると、主役が替わるとこと…

『QJKJQ』佐藤究、講談社文庫、2016、2018ーー信頼できない語りだけど面白い

『テスカトリポカ』の作者の江戸川乱歩賞受賞でデビュー作。『テスカトリポカ』『爆発物処理班の遭遇したスピン』が素晴らしかった。本書の評判は設定がライトノベル的というところまでしか知らず手に取っていませんでした。 最初はライトノベル的かなと思い…

『猫の舌に釘をうて』都筑道夫、徳間文庫、1961、2022ーー二重・三重の設定の謎解きミステリ

都筑道夫の長編ミステリ第2作目の作品。『やぶにらみの時計』と同様に短かったので、連続して読んだ。本作は昔読んだのだけど、まったく記憶にありません。初読とまったく同じです。発表はジャプリゾの『シンデレラの罠』の前年であり、オリジナリティがバリ…

『やぶにらみの時計』 都筑道夫、徳間文庫、1961、2021ーートリッキーな二人称小説

分厚い小説が続いたので、短期間で読み終えられる小説ということで、また都筑道夫の初期長編が徳間文庫で再刊されていたので手に取りました。 二人称の小説で、ストーリーとは言うと、朝起きてみると、妻や友人が自分のことを別人の名前で呼ぶという謎から始…

『グレイラットの殺人』 M・W・クレイヴン 、東野さやか訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、2021、2023ーースリラーと謎解きの融合

クレイヴンの4作目の作品。ワシントン・ポーのシリーズ最新作です。前作までは謎解きミステリ一直線でストーリーに二転三転ありましたが、本作ではスリラー的要素も含んだものとなっています。しかし、事件を盛り込みすぎている感じがして、本筋になかなか入…

『頬に哀しみを刻め』S・A コスビー、加賀山卓朗訳、ハーパーBOOKS、2021、2023ーーよくできたアメリカ映画の原作

新人作家コスビーの第2作目の作品。アメリカ映画っぽい、息子を殺された父親二人のバディが犯人を捜しまわる復讐+ノワールもの。 以前、第1作目の『黒き荒野の果て』を読もうと手にとってけれど、視点がコロコロ変わって読みづらくで最初の方であきらめてし…

『トゥルー・クライム・ストーリー』ジョセフ・ノックス、池田真紀子訳、新潮文庫、2021、2023ーー信用できな語り手は疲れる

ノックスの評判のよいノン・シリーズということで手に取ったけど、結論をいえば、まあ後悔。地の分がなく、インタビューとメールのみの本文が700頁近くあって、読んでも読んでも終わらない。 マンチェスター大学の女子大生ゾーイ・ノーランが失踪して、6年経…

『フィッシュストーリー』伊坂幸太郎、新潮文庫、2007

伊坂幸太郎氏の「動物園のエンジン」「サクリファイス」「フィッシュストーリー」「ポテチ」の 4つの短編を収めた短編集。僕としては、「サクリファイス」が面白かったかな。 フィッシュストーリー(新潮文庫) 作者:伊坂幸太郎 新潮社 Amazon

『渇きの地』クリス・ハマー, 山中朝晶訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2018、2023ーージャーナリストが事件の真相を探るということは

版元の「究極のホワイダニット・ミステリ」というコピー紹介、複数の書評で好評だったこと、作者がオーストラリアのジャーナリストのフィクションデビュー作で、英国推理作家協会(CWA)賞最優秀新人賞作であること、舞台が現代であることから手に取りました…