ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『コールドゲーム』荻原浩、新潮文庫、2002、2005ーー学園ミステリの魅力を大いに備えた佳作

荻原浩氏の初期の高校生を主役にしたミステリ。高校3年生の夏休みを描いていて舞台が学校ではないので厳密には学園ミステリとはいえないけど、学校という窮屈な舞台を描いた学園ミステリの魅力を大いに備えた佳作で☆☆☆☆というところです。やっぱり文章がう…

『傷だらけのカミーユ』ピエール・ルメートル、橘明美訳、文春文庫、2012、2016ーー読者を途中でやめさせない小説

カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの長編第3作目の最終作品。ルメートルはミステリマニアのようで、このシリーズでも多くの作家に対して言及していますが、単なる引用というわけではなく、どのようにしたら読者に対して中途でやめさせないか、非常に研…

『カササギ殺人事件』アンソニー・ホロヴィッツ、山田蘭訳、創元推理文庫、2017、2018ーークリスティマニアのためのミステリ

昨年、ミステリランキングの多くのベストに選ばれた謎解きミステリ。それもアガサ・クリスティ風のミス・マープル物のようなイギリスのミステリである。これを現代で成立されるのは非常に難しくそれだけでも貴重です。上巻は、イギリスの田舎の大きな屋敷の…

『御手洗潔の挨拶』島田荘司、講談社文庫、1987、1991ーートリックに奉仕する設定・舞台・展開

1月後半から仕事が忙しく、長編は精神的に疲れるので日本の短編ミステリ集の中で選びました。 本書は御手洗潔シリーズの第1短編集で昔読んでいますが内容はすっぽり忘れていました。『 数字錠』『疾走する死者』『紫電改研究保存会』『ギリシャの犬』の4編…