2019-01-01から1年間の記事一覧
ヘンリ・メリヴェール卿もの第16長編ですから、わりあい後期ともいえます。表4に「人間消失の謎に挑んだ名作」と紹介されています。 エジプトから青銅ランプを持ち帰ったヘレン・ローリング嬢は、自宅の屋敷に入ったあとで、その屋敷からランプだけを残して…
貧困というと生まれや環境からどうしようも対策を立てようもないものを浮かべますが、本書はそのなかの一部を記した11名のインタビュー・ルポで、誰もが一歩間違えれば陥るかもしれない事例でしたので、非常に興味深かった。筆者が女性のためか、男性著者の…
実を言うと随分前に読んだのですが、どうも当時心が死んでいたらしく記録をすることができなかったものの一つです。ですので印象のみ記します。 葉村晶シリーズ第6作目の作品。ベテランとも言える作家がこのようなムダの少ない濃密でいくつかのストーリーが…
日本ミステリを読もうと思って手に出したのは、東野圭吾氏のガリレオシリーズの第4作目の作品で長編としては、『容疑者Xの献身』の次の作品に当たります。私としては発表当時の評判はまったく覚えていません。というか東野氏の作品はやたら評判がよいという…
クルト・ヴァランダー警部シリーズの第5作目の作品で、英国推理作家協会賞(CWA賞)最優秀長編賞作。代表作の一つといっていいでしょう。1995年発表でなんと20年以上前の作品で、いかにも当時流行ったシリアルキラー的な、斧で殺害し頭皮を剥がしていく犯人…
主にJ3について、Jリーガーのセカンドキャリアについて、現状の報告と問題提起を目的にしたインタビュー集。J3の選手、町クラブのコーチ、森崎嘉之、安永聡太郎、西村卓朗、岡野雅行、磯貝洋光にインタビューを行っています。大泉氏も言及している通り技術を…
イギリスの1930年代にデビューしたミステリ作家レオ・ブルースのデビュー作。作風はイギリスミステリ黄金時代そのもので、シリアスではないユーモアミステリです。私は初読で、今までに読んだ中では、殺人をゲームとして扱っているという点で、バークリー、…
Amazonでおすすめされるまで気が付かなかった狩撫麻礼氏の追悼本で、ファンならばまったく損をしない充実した編集になっています。ちょっとこれ以上の追悼本は思いつかないくらいです。 かわぐちかいじ、江口寿史、松森正、大根仁のインタビュー・追悼の文章…
アーナルデュル・インドリダソンの新作といっても、原著発行は2005年のかなりの旧作。インドリダソンは私と相性がよく、文章を読んでいても不快な気分になりません。今回もエーレンデュルの捜査のたたずまいや行動様式がメグレ警部に似ていて、メグレ警部物…
久しぶりのSFです。わたしのSF歴は高校時代から、有名どころの作品を一通りではなく半分ぐらいかじってきた感じで、普通の人よりは読んでいる程度。例えば、『果てしなき流れの果てに』をまったく無情報(いま考えてみればすごい)で読んで、SFの醍醐味を味…
私は私立探偵小説が好きである。その理由は、どこから収入を得ているのか、財産をもっているのかにかかわらず、彼らがフリーランスだからである。何の権力を受けず、権力から自由に生きることを選択しているからである。 そういう点からみると、警察官はしょ…
山口雅也氏の「モンスター」に関連する短編を集めた短編集。「もう一人の私がもう一人」「半熟卵にしてくれと探偵は言った」「死人の車ーーある都市伝説」「Jazzy」「箱の中の中」「モンスターズーー怪物團殺害事件」の7編が収録されています。山口氏の作品…
折原一氏の作品は何を読んで何を読んでいないか、わからなくなってしまいましたが、おそらく半分ぐらいは読んでいるかと思います。そして読むたびにいつも思うのは、 「なんて上手い文章なんだろう」ということ。叙述トリックを中心とした作風が求めた文体な…
私立探偵ジョン・タナーシリーズ全14作中14作目の作品でラスト。原著は2000年ですからなんと19年前の作品ですね。これで新作が読めないとなると厳しいですね。 このシリーズは、ネオ・ハードボイルド小説として始まりながら、次第に普通に私立探偵+謎解き小…
ヘレン・マクロイ全31作中17作目の作品。後期の作品かと思っていましたが、意外と中期の作品で、おそらく当時としては野心的で、ここまで翻訳が遅れたことのは意外性の極限を狙って滑ってしまったが、現在改めて読むと面白さを感じることができる作品といえ…
ジョン・ル・カレの第21作めの作品で、私にとっても久々です。 スパイ小説華やからしき頃は私のようなミステリ者もスパイ小説を読んでいたものです。しかしいつの間にやら読まなくなってしまった。ル・カレなどもその筆頭で、まずは名作の『寒い国から帰って…
杉村三郎シリーズの3作目。このシリーズはアルバート・サムスン・シリーズを意識しているということで気になるシリーズで、主人公が肉体派ではなく、かといって知性派でもない、あくまでニュートラルなところを進んでいます。 主人公らは、バスジャック事件…
フランスのジャーナリスト、作家、翻訳家、ライターのミステリ作家デビュー作。内容はいろいろな媒体に展開できるようになっていて、いかにもこれらの経歴を活かしきった作品でした。 パリ警視庁に新たに特別捜査班が設置された。メンバーは約20名で『相棒』…
『13・67』の作者・陳浩基氏の短編集。339ページで17編が収録されています。かねてから言われていたとおり、SFもあって、バラエティにとんでいます。ショートショートもありますが、落ちのある話というよりも、スケッチという感じで、ファン向けの短編集です…
私は貴志氏の作品はあまり合わないようで、あまり読んでいません。本書もベスト1を取るくらいなので気になってはいたのですが、どうも自分には関係ない作品のような気がして、今の今ままでまったくノー知識で読んでしまったら、あらあら驚き、こんな超弩級…
中町信の第6作目の作品。もとのタイトルは『散歩する死者』で創元推理文庫になるときに改題された。読んでみると、当時の欧米の謎解きミステリを知った上で、それを乗り越えていく野心的な作品でした。中途が退屈だったのが残念ですが。というわけで☆☆☆★とい…
私が歳をとったせいだろうか、主人公に共感してしまって、連載の1回めから目を離せない作品。とともに、先読みをまったくさせてくれない作品。少々ずるい部分もあるけれど、読者に先を読ませないためには、こうすればよいという見本を見せてくれる。 40代の…
近所の図書館の新入荷コーナーに置いてあったのをたまたま拾い上げて読んでしまったノンフィクション・ノベル?(そこには三島由紀夫の現在の新潮文庫の活字の大きさにリメイクされた『午後の曳航』もあった) 手にとった理由は、「クセノポン…どっかで聞い…
先日、「激レアさんを連れてきた。」で放送された料理人の自伝的エッセイ集。内容的には「激レアさん」というよりも「クレージージャーニー」に近いけど、著者が非常に楽天的で、普通の人なら苦労としてじくじく記せるところをさらっと「こんなことがあった…
人気脚本家のミステリ小説デビュー作で、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞作。好意的な書評が多かったことと、最近のミステリにしては薄かったので手に取りましたが、わたしにはダメだった…。こういう、あえて破滅に向かっていく筋書きって昔は好き…
荻原浩氏の初期の高校生を主役にしたミステリ。高校3年生の夏休みを描いていて舞台が学校ではないので厳密には学園ミステリとはいえないけど、学校という窮屈な舞台を描いた学園ミステリの魅力を大いに備えた佳作で☆☆☆☆というところです。やっぱり文章がう…
カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの長編第3作目の最終作品。ルメートルはミステリマニアのようで、このシリーズでも多くの作家に対して言及していますが、単なる引用というわけではなく、どのようにしたら読者に対して中途でやめさせないか、非常に研…
昨年、ミステリランキングの多くのベストに選ばれた謎解きミステリ。それもアガサ・クリスティ風のミス・マープル物のようなイギリスのミステリである。これを現代で成立されるのは非常に難しくそれだけでも貴重です。上巻は、イギリスの田舎の大きな屋敷の…
1月後半から仕事が忙しく、長編は精神的に疲れるので日本の短編ミステリ集の中で選びました。 本書は御手洗潔シリーズの第1短編集で昔読んでいますが内容はすっぽり忘れていました。『 数字錠』『疾走する死者』『紫電改研究保存会』『ギリシャの犬』の4編…
奇妙な味のさきがけの作家、ジョン・コリアの短編集。私は昔『炎のなかの絵』を読んでいるのですが、あまり記憶に残りませんでした。他の作家よりオチの強烈度が少ない、物足りないと感じたように思います。 本書は約300ページに17の短編が収録されており、…