ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『静かな炎天』若竹七海,文春文庫,2016――貴重な私立探偵小説

私立探偵・葉村晶の「青い影」「静かな炎天」「熱海ブライトン・ロック」「副島さんは言っている」「血の凶作」「聖夜プラス1」とタイトルの6つの短編をおさめた短編集。 私立探偵ミステリは、刑事ものや謎解きなど他のミステリに比べて少なくなってきてい…

『世界まんが塾』大塚英志+世界まんが塾(浅野龍哉、中島千晴、斉夢菲),KADOKAWA,2017

大塚英志氏は、いわゆる「マンガ工学」というようなものの確立を目論んでいるようで、本書もその一つです。中国・台湾・フランスでマンガ(本書では「まんが」表記)塾を開催し、石森章太郎の『龍神沼』のシナリオをもとにマンガを描いてもらい、どのように…

『二階の住人とその時代―転形期のサブカルチャー私史』大塚英志,星海社新書,2016

大塚英志氏が漫画家を目指しつつ、徳間書店のマンガ雑誌の編集者のアルバイトに誘われ、2年間ぐらい働いていたときの、『アニメージュ』を中心にどのようにオタクの「評論」文化が作り出されてきたかを自身の経験や見聞きしたことを交えて語ったもの。あの時…

『風立ちぬー宮崎駿の妄想カムバック』宮崎駿,大日本絵画,2015

映画『風立ちぬ』の原作マンガ。これが原作だったとはまったく知りませんでした。これを鈴木氏が読んで映画化を提案し、宮崎氏はいったん拒否したのは頷けます。原案があって、どのように映画に耐えうる物語にしていったのか、映画でどこを削除したのかがわ…

『刑事司法とジェンダー』牧野雅子,インパクト出版会,2013――性犯罪加害者の心理はどのようなものか

性犯罪者の加害者の供述書をもとにした司法の問題点を示した論文を書籍化したもの。性犯罪加害者の心理がどのようなものか示していると思っていたのですが、事例が1つであるためか汎化は難しいなあと感じました。 また、供述そのものが加害者の本心なのか、…

『死はわが隣人』コリン・デクスター、大庭忠男訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ1661、1996、1998――大学の学寮長の選挙と殺人

先日は、コリン・デクスターが亡くなられたんですね。デクスターの功績といえば、やはり謎解きミステリをピーター・ラヴゼイとともに引っ張んてきたということでしょう。また、モース警部という個性的かつイギリスの探偵として伝統的なキャラクターを創造し…