ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『沈黙者』折原一,文春文庫,2001→2004

折原一氏は1985年デビューですから今年でおよそ30年の作家生活。本作は、初期・中期・後期という分け方でしたら、中期にあたる作品ですかね。初期から一貫して叙述トリックを用いているのは変化がないのですが、有名なニュースからB級ニュースまで、実在の事…

『錯覚学─知覚の謎を解く』一川誠,集英社新書,2012

「体験された内容と実際とがことなることは、総称して錯覚(illusion)と呼ばれる。また、視覚に関する錯覚は錯視(visual illusion)、事柄についての認識が客観的事実と異なることを錯誤(mistake)と呼ぶ」(6〜7頁より)。本書は、どのような錯覚がある…

『殺人者の顔』ヘニング・マンケル,柳沢由実子訳,創元推理文庫,1991→2001

うわっ、やっちまったよ。以下は、ほとんどネタバレなので未読の方は2つめのパラグラフまでで、無色に反転されてた文書の後は読まない方がいいですよ。 クルト・ヴァランダー警部シリーズはせっかく文庫で出版されているのだから、最初から読んでいきたいと…

『灰夜――新宿鮫?』大沢在昌,光文社文庫,2001→2004

新宿鮫シリーズは確か『炎蛹』あるいは『氷舞』まで、ほぼリアルタイムで追っていたのですが、そのあたりでワンパターン化して飽きてしまって、その後手に取らなくなりました。大沢氏の作品そのものは、例えば『闇先案内人』のように時折話題になったものは…

『屍者の帝国』伊藤計劃, 円城塔,河出書房新社,2012

昨年話題になったSF小説。ミステリ関係の各種ベスト企画にも顔を見せていたので読みました。フランケンシュタインを生成する技術から屍者を生成する技術が生まれた世界が舞台。若かりしワトソンが密命を受けて、その技術の秘密を追って冒険するというもの。…

『喪失』モー・ヘイダー, 北野寿美枝訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,2010→2012

2012年度のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞受賞作。作者のモー・ヘイダーのジャック・キャフェリー警部ものの第5作目の作品。 冒頭のカージャック事件から少女誘拐事件に至るまでの展開は面白いのですが、語り口は重厚でじっくりしており悠然と進みます。し…