ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

『コミカライズ魂―『仮面ライダー』に始まる児童マンガ史』すがやみつる,河出新書056,2022

すがやみつる氏のコミカライズに絞った自分史といった感じで,『仮面ライダー青春譜』と同様に1970年~1980年台のマンガ事情の一部がわかったうえで,非常に面白い。 私にとって,すがや氏といえば,ずーっと追ってきた漫画家ではなく,まず『ゲームセンター…

『方舟』夕木春央,講談社,2022ー密室内の殺人

書店でのジャケ買いの謎解きミステリ。作者もまったく知りませんでした。山奥の大きな船型のホテルのような地下建築に宿泊した9名だが,突然の地震によって,出口が狭まり,地下に閉じこまれてしまった。そのうえ,地下水が徐々に増えて,地下建築の部屋その…

『ポピーのためにできること』ジャニス・ハレット,山田 蘭訳,集英社文庫,2022

イギリスの劇作家,脚本家のデビュー作。アマゾンによると「サンデー・タイムズ紙が選ぶ、2021年ベスト・ミステリー!」に選ばれたとのこと。 本文がイギリスの田舎の劇団とその関係者のメールのみで語られるミステリ。昔でいえば本文が手紙のみのようなもの…

『此の世の果ての殺人』荒木あかね,講談社,2022ーー乱歩賞も変わった

今年度の江戸川乱歩賞受賞作。23歳の新人であるということ,選評で最終選考作5作すべてが特殊設定ミステリであり,その中で満場一致だったということ,また乱歩賞だから長さに制限があり読むのに長時間かからないだろうということで,手に取りました。 あと2…

『嫌われた監督―落合博満は中日をどう変えたのか』鈴木忠平,文藝春秋,2021

本書は久々にスポーツノンフィクションで評判を得た作品。インターネット普及以降,スポーツノンフィクションの傑作はなかなか現れなくなった。それは,スポーツノンフィクションそのものに,悪く言えば暴露的なものがあるからで,インターネットに小出しに…

『テスカトリポカ』佐藤 究,KADOKAWA,2021――作風でいえば諸星大二郎+飯嶋和一

本書は,作風でいえば諸星大二郎+飯嶋和一というような夢の取り合わせで驚きました。昨年のミステリランキングで上位,直木賞を受賞したこともむべなるかな。作者が乱歩賞作家であったことも興味をもちました。 アステカ古代文明+メキシコ麻薬戦争+臓器売…

アンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭 (訳)『ヨルガオ殺人事件』創元推理文庫,2020,2021ーー作中作が結構愉しめる

『カササギ殺人事件』の続編で,作中作のある謎解きミステリ。非常に長かった…。これだけの長さになると仕事しながらだと疲れます。しかも年々記憶力が減退していて,『カササギ殺人事件』のことは少しも覚えていない…。自分のレビューを読んでも全く思い出…

『兇人邸の殺人』今村昌弘,東京創元社,2021ーーうーん,時代は変わった

昨年のベストランキングで上位に挙げられていたので,この著者の第1作目『屍人荘の殺人』以来に読みました。まさか,第1作目からシリーズになっていると思いませんでしたが,読んでみて,なるほど,特殊設定ミステリとしての世界観が同じだからシリーズにし…

『印』アーナルデュル・インドリダソン,柳沢由実子訳,東京創元社,2007,2022

エーレンデュル捜査官シリーズ第6作目の作品。なかなか良い。私はこのシリーズがロス・マクドナルドの雰囲気をまとっていて,非常に好みである。ロスマクの魅力は複雑なプロットが解かれていく様だと思っていたけど,インドリダソンを読むとユーモアのない世…

ヘニング・マンケル,柳沢由実子(訳)『 五番目の女』創元推理文庫,1996,2010

ヘニング・マンケルのヴァランダー警部シリーズの第6作目の作品。とにかく読むのに時間がかかりました。年齢を重ねたうえに,消化すべきコンテンツが多くなった現在,このような長大な小説を読む時間は,ますます少なくなります。同じ時間を消費するなら映像…

『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成,KADOKAWA,2021ーーオリジナリティあふれる小説

昨年のミステリベストランキングで上位にきていたミステリ。友人が一気に読んでいたので借りました。 ある大手の有名なIT企業の新卒の最終面接に6名の大学生が残った。そこで集団ディスカッションをして内定にふさわしい人に投票して,その投票数が多かった…

『暗闇の囁き〈新装改訂版〉』綾辻行人,講談社文庫,1989,2021

綾辻氏の第7作目の作品。一応「囁きシリーズ」のように位置づけられているけれど,内容に関連性がない独立した作品で,謎解きミステリではなく,サスペンスミステリというか奇妙な話テイストの作品でスパスパ読める。短編のような感じすらする。☆☆☆★というと…

『荘園ー墾田永年私財法から応仁の乱まで』伊藤俊一,中公新書,2021

最近ベストセラーになっている歴史に関する新書。僕はあまり歴史ものを読まないけど,荘園というテーマは学校の歴史で学んだものの,実際はどういうものだったかわからず,荘園が武士を生んだという流れはどういうものだったか,興味をもって読んだ。本書は…

『黒牢城』米澤穂信,KADOKAWA,2021

久しぶりのブログです。最近年齢のためか,仕事で疲れているためか,まったく小説を読む気力が失われてしまいました。新刊をレビューし続ける書評家はすごいと思う。小説を読むのも体力だから,それを失ってしまう時期が来るはずなのに。 さて,本作は米澤氏…

『その裁きは死』アンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭訳,創元推理文庫,2018,2020ーークリスティのハイブリッド版

ホロヴィッツのホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズの第2作目の作品。以前も書いたけどホロヴィッツのミステリは非常に細かくて目が離せないのだけど,つい目を離してしまって,内容がわからなくなってしまって,最後は不完全燃焼になってしまいます。 本書…