ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2016-01-01から1年間の記事一覧

『佐藤可士和の超整理術』佐藤可士和 ,日経ビジネス人文庫,2007,2011

どうにもこうにも整理ができなくて、私のデスクは非常に物がごちゃごちゃしていて、少し時間が経ってしまうと、物を探すのに時間がかかってしまう。自分なりに整理していたのですが、なかなかできない。 そこで自分が考えたのが、すべてをスキャンして、デー…

『ぬきさしならない依頼』ロバート・クレイス,高橋恭美子訳,扶桑社ミステリー,1993,1996

ロスの探偵エルヴィス・コール・シリーズの第4作目の作品。ロバート・B・パーカーの強い影響を受けた、1980年代かと思わせるハードボイルド小説。 自分の恋人の刑事がイライラして怒りっぽくなっているので、その原因を調べてほしいという女性の依頼人がエル…

『「ない仕事」の作り方』みうらじゅん,文藝春秋,2015

みうらじゅん氏の今まで自分でやってきたことをまとめるビジネス書。まえがきで「本書が皆さんの仕事の役に立つことを願っています」と書かれていますが、そのとおりの内容となっています。 どんな仕事であれ、「やりたいこと」と「やらねばならぬこと」の間…

こんな企画が欲しい――『このミステリーがすごい! 2017年版』『このミステリーがすごい!』編集部,宝島社,2016

今年は視力の都合や仕事で忙しく、であまり本を読めなかったので、ランキングに入っているものは一冊もなし。 しかし、このようなランキングをみると、書評って仕事とはいえ、新刊をきちんと読んでいる人って凄い。僕なんて、時間の無駄と思える小説は一切読…

ブックオフは専門書を増やしてほしい

workingnews.blog117.fc2.com このスレが面白かった。ブックオフはこのところ売り上げが落ちてきていると聞くと、そういえば私もブックオフに行ったものの本を購入することが少なくなりました。ようするに、ほしい本がないんですね。 私は、ブックオフではマ…

『生か、死か』マイケル・ロボサム,越前敏弥訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,2014,2016 ☆☆☆☆

作者はオーストラリアのベテラン作家で自国ではこれまで賞を受賞し、本作で英国推理作家協会賞ゴールド・ダカー賞、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞最終候補となったそうです。 主人公は現金輸送車襲撃事件の犯人として逮捕された男、オーディ・パーマ…

『2』野崎まど、メディアワークス文庫、2012――ロジカルな壮大なホラ話 ☆☆☆☆☆

本書は何の予備知識もなく読み始めたのですが、野崎まど氏のとりあえず第1期の最後といえる作品でした。傑作です。今までの野崎氏の作品を伏線として、次第に、そしてたたみかけるように、ある壮大なホラ話となっていく様は、快楽としかいいようがありません…

『スリップに気をつけて』 A・A・フェア,宇野利泰訳,ハヤカワ・ミステリ 426,1957,1958――脅迫者を捜すラム

バーサ・クール&ドナルド・ラム・シリーズ全29作中、17番目の作品。 パーティで酔っ払った男が、若い女と一緒にホテルに行って、その女との情事がばれたくなければ金を払え、という脅迫の手紙が届いたので、どうにかしてほしいという依頼があった。その脅迫…

『沈黙の町で』奥田英朗,朝日文庫,2013,2016――中学時代は自由のないきつい世界 ☆☆☆☆

久しぶりの奥田英朗氏の作品。本作は新聞連載時から評判を知っていて、いつか読もうと思っている内に時間が経ってしまいました。奥田氏の作品は、ギャグも良いけれど、犯罪小説系でしたら読みたいと思うので、本作のような構成・タッチで、エルロイのような…

『緋色の囁き』綾辻行人,講談社文庫,1993,1997ーー名門女子高の寮の連続殺人事件

綾辻氏の第4作目の作品(出版リストが出ているあとがきは便利だね)。本書が出版された当時、私は社会派には興味を持っていなかったものの、新本格派には入れ込んでいませんでした。それでも、『館シリーズ』の謎解き派が、本書のような謎解きとは別のミステ…

「特集 2016新書大賞」『中央公論 2016年 03 月号』2016

毎年行われている、新書大賞ですが、すっかり忘れていました。こういうのは、なるべく追っかけておきたいですね。 まあ毎年書いていることですが、最近の新書は読み応えがあるものがなく、もっとある事柄の基礎文献となるものが欲しいです。昔のリメイクでも…

『森を抜ける道』コリン・デクスター、大庭忠男訳、ハヤカワ ポケット ミステリ、1992、1993ーーなぜ失踪した女子学生を探す詩が送られてきたか?

コリン・デクスターのモース主任警部シリーズ・全13作中に第9作目の作品。残りは少なくなってきました。本作は、英国推理作家協会賞ゴールド・ダカー受賞作ということは、トップの作品ですね。トリックそのものは、そういう作品です。 休暇でホテルに滞在し…

『メタクソ編集王―少年ジャンプと名づけた男』角南攻、竹書房、2014ーー『ヤングジャンプ』の作り方

『少年ジャンプ』で立ち上げから編集を、『ヤングジャンプ』でも立ち上げから編集し、10年間編集長を担当し、その後、白泉社に移籍し『ヤングアニマル』に携わった名編集者のインタビューによる自叙伝です。これまで、『少年ジャンプ』はどのように編集され…

『砕け散るところを見せてあげる』竹宮ゆゆこ、新潮文庫nex、2016――少年が少女を助ける物語

竹宮ゆゆこ氏の新潮文庫2作目の作品。書店で見かけて、帯の文句と推薦文に惹かれて購入しました。「小説の新たな煌めきを示す、記念碑的傑作」と編集者に書かせる作品なのか……と。 あまりじっくり進む内容ではないので、他の書籍を挟みながら、少しずつ読ん…

『35歳からの海外旅行<再>入門』吉田友和,SB新書,2014ーー読ませる売れる文章

こう仕事で忙しいと、一年ぐらい仕事を休んで、旅行に行きたいという欲望が止まりません。そういう人を読者対象にした新書なんでしょうね。まんまと引っかかってしまいました。 この著者の作品は何冊めかなんですけど、中身がないけど、読ませる文章ですよね…

『メディアミックス化する日本』大塚英志,イースト新書,2014ー角川春樹氏と角川歴彦氏のメディアに対する考え方の根本的な違いとは何か

本書を読むまで、角川春樹氏と角川歴彦氏のメディアに対する考え方の根本的な違いがあることを知りませんでした。中にいる人にとっては自明なことなのでしょう。本書では、角川書店がどうしてあのように変化したのかがよくわかります。 帯では「KADOKAWAとド…

『欲望の爪痕』スティーヴン・グリーンリーフ,黒原敏行訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ1662,1996,1998――元恋人の婚約者で失踪した娘を捜す

私立探偵ジョン・タナー・シリーズ第11作目の作品。本作品の特徴は、元弁護士の普通の紳士的な私立探偵がコミュニケーションを武器に丹念に、依頼人の依頼に対して追っていくところでしょう。舞台は裏社会との関わりもなく、ある意味において、非常にリアリ…

『職業、ブックライター。 ー毎月1冊10万字書く私の方法』上阪徹、講談社、2013

本書は、著者にインタビューして、書籍の原稿を書き上げるブックライターの仕事についての本で、いかに質の良い原稿にするかが書かれています。 このような仕事がなぜ必要とされるか、出版に携わらない方にはピンとこないかもしれませんが、書籍や雑誌のため…

『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕』ジョーゼフ・キャンベル, 倉田真木, 斎藤静代, 関根光宏訳,ハヤカワ・ノンフィクション文庫,1949,2015ーー脳内にさまざまな想像がかけめぐる

『スター・ウォーズ』に影響を与えたとして知られるようになった論文で,神話において英雄はどのように航跡を辿るのかについて語られています。確か「イニシエーション」(通過儀礼)という言葉は、本書から生まれた(or広まった)ような気がします。私も書…

『不良少女』樋口有介,創元推理文庫,2007――文体を変える

柚木草平シリーズの短編集。「秋の手紙」(1995),「薔薇虫」(1998),「不良少女」(2001),「スペインの海」(2001)の4編が収録。表題作の「不良少女」は解決しないで唐突に終わったので驚いた。とはいっても,短編集としては,どの作品も愉しめる。 …

『最悪のとき』ウィリアム・P・マッギヴァーン,井上勇訳,創元推理文庫,1955,1960

ウィリアム P.マッギヴァーンは第二次世界大戦後に活躍したミステリ作家で,主に悪徳警官ものが多いとされています。 日本の翻訳ミステリは,戦後から本格的になりますが,最初は戦前から引き続き,クリスティ,クイーンなどの謎解きものから紹介されていき…

『奇界遺産』佐藤健寿,エクスナレッジ,2010/『奇界遺産2』佐藤健寿,エクスナレッジ,2014

著者はTBSテレビの番組の「クレージージャーニー」でゲストの一人です。この番組は毎回見ていて,このゲストの本って読みたくなりますよね。丸山ゴンザレス氏でも,他の冒険者でも。何でですかね。番組を見ていると,一部しか見せてくれない,もっと見たいの…

『アオイホノオ 15』島本和彦,少年サンデーコミックススペシャル,2016

うーん,面白い。新谷かおる先生の編集者の詰め方は,比較的後期の作品の編集者から,週のほとんどを編集部で詰めていたと聞いたことがあります。この連載は『ファントム無頼』か『ふたり鷹』の初期だと思うんですが,その頃から,こんなに苦労していたんで…

『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男―西崎義展の狂気』牧村康正,山田哲久,講談社,2015

昨年,評判が高かった『ヤマト』のプロデューサーの西崎義展の生涯を述べられたノンフィクション。 いやー,久しぶりですね,いわゆる「怪物」の伝記ですね。「怪物」とは正確に何といったらよいかわからないのですが,大いなることを行うためには,犯罪を含…

「特集=出版社を作ろう!」『本の雑誌394号』2016/03/『一度は読んでほしい 小さな出版社のおもしろい本』 (男の隠れ家教養シリーズ),三栄書房,2014

『本の雑誌』の 「出版社を作ろう!」という特集には,とても心惹かれましたねえ。僕は昔,社員3名の小さな出版社に勤めていて,また,ぼんやりですが会社を辞めることを考えているので。しかし,出版社を作ることまでは考えていなかったですけど。 数年前に…

『少年の名はジルベール』竹宮惠子,小学館,2016

竹宮惠子氏の東京上京から『風と木の詩』の連載まで綴ったエッセイ集。 最初は書き下ろしかと思っていたけれど、奥付前のクレジットをみると語り下ろしらしいですね。オーケンの『サブカルで食う』も語り下ろしでしたが、このように自らの手札を披露するエッ…

『ひきがえるの夜』マイクル・コリンズ,木村二郎訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ1368,1970,1981――テーマは現代にも通じる

隻腕の私立探偵のダン・フォーチューン・シリーズの第3作目の作品。隻腕の設定は意味がないと思えるほど、本格的ハードボイルド小説です。 リカルド・ヴェガは大物俳優で演出家でプロモーターでもあった。ヴェガの舞台で女優のマーティーは役を得たがヴェガ…

『3万人が富を築いた お金をふやす教科書』『銀行員だけが知っているお金を増やすしくみ』

これらの2冊を読んで、お金を増やすには、自分の全部の時間を集中しなくてはならない、ということがわかりました。片手間ではダメですね。 インターネットの時代になってからは、あらゆる情報が分散してしまった感じがします。昔は、新聞とテレビ、あと自分…

 『YOU』キャロライン・ケプネス,白石朗訳,講談社文庫,2014,2016――ストーカーと普通の人の間

アメリカの新人の処女作。もっともケプネスは短編を多数発表していたり、雑誌やwebで記事を書いたり、放送作家や映画監督をしたりなど、多才な生きの良い人物のようです。年齢もわからないしね。本書は新聞の書評で、ストーカー小説だけど普通のものとは少し…

『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録』三木一馬,KADOKAWA,2015――エンタメ編集者のビジネス書

この頃、編集者本の出版が増えているような気がします。あれとかこれとか……(すでに購入しています)。そんななかで本書は、電撃文庫でヒットを飛ばしているスター編集者の編集術をまとめたものです。 私の仕事内容とは異なりますが、少しでも参考になればな…