ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『死者との結婚』ウィリアム・アイリッシュ(◎)

死者との結婚 (ハヤカワ・ミステリ文庫 9-3)

死者との結婚 (ハヤカワ・ミステリ文庫 9-3)

アマゾンにカバーの写真はなかったか…。本当に久しぶり(10年以上)のアイリッシュ。参ったなあ。面白い。もし現在復刻されたとしたら,年末ベスト10に入るのではないでしょうか。いわゆる心理サスペンスですが,現代から見ると,サイコ的なところが皆無なのでロマンティックサスペンスという感じ。それが,奇妙に安心感を与えてくれます。安定したドキドキ感といった感じですね。ヒッチコックの『裏窓』のよう。って,『裏窓』の原作はアイリッシュですもんね。似ているのは当たり前か。
巻末著作リストによると,アイリッシュは1940年に処女長編『黒衣の花嫁』を発表,本書は長編10作めで1948年に発表したもの。同年に『喪服のランデヴー』も書いていますから,作家として充実していた時期なんでしょう。
男に捨てられた主人公が,列車転覆事故に巻き込まれ,たまたま同乗していた事故で死んでしまった若夫婦に間違えられてしまう…というお話。最後はちょっとしたリドルストーリーとなっています。昔でしたら逃げたなと感じますが,現代ですとそれもアリかなとあまり気になりません。平明な文章で書かれております。