ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『QJKJQ』佐藤究、講談社文庫、2016、2018ーー信頼できない語りだけど面白い

 『テスカトリポカ』の作者の江戸川乱歩賞受賞でデビュー作。『テスカトリポカ』『爆発物処理班の遭遇したスピン』が素晴らしかった。本書の評判は設定がライトノベル的というところまでしか知らず手に取っていませんでした。

 最初はライトノベル的かなと思いつつ、昔の近所で私的な物語が起こる村上春樹的な語り口に変化し、最後は現実と意識が紛れ込む信頼できない語りに収れんしていき、真相が語られるものの、本当にそれが真相なのかという感じで頁を閉じる。そういう意味で、かなりオリジナリティのある作品だと思います。

 読後、Amazonのレビューと江戸川乱歩賞の選評を読んで、自分の読後感と比較しましたが、どの評も一理ありという感じで、まあこれは好みだよな、というところに落ち着きます。

 というわけで、☆☆☆☆というところです。これはライトノベルの世界で行われていることであり新しくないのだというのもわかりますが、やはり夢野久作的であり、諸星大二郎的でもあり、古くて新しいというのが正しいと思う。すでに発表から6年たっていますが古さと新しさをもっていますからね。