hoshi-itsu’s 本にまつわるblog

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『持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想』広井良典,筑摩書房,2006-07(○)

持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想 (ちくま新書)

持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想 (ちくま新書)

そうは書いてはいませんが「持続可能」という言葉が本書のコンセプトといえるでしょう。ようするにこのままの社会では,破綻が待っているということです。国が借金して,収入以上の支払い計画を立てているのですから。その借金はどこから来るのでしょう。未来の収入からです。できれば,その負債を負った方々が返済をしてくれると有り難いのですが,そうはならないのでしょう。哀しいことです。

本書に興味を持ったのは,何週間か前の朝日新聞の記事でした。著者の広井氏は厚生省勤務を経て千葉大学法経学部教授,社会保障,環境,医療に関する政策研究をしている経済学者だったかと思います(ビジネス誌のコメントを見たことがあります)。その記事では,「人生前半の社会保障」が必要であり,20歳代に対し年金を支給し,経済的なセーフティネットが必要だと述べていたかと思います(うろ覚えで,ググっても検索できませんでした)。まあ,その考えに共感したわけです。

私の考えですが,バブル時代の銀行の不良債権がほぼなくなった時点で,小泉政権の役割は果たしたと思うんです。様々なものを失いましたが,日本経済のためには必要だった。次はその失ったものも代わりを新たに作らなくてはなりません。そのために今までの経済成長を前提としたシステムに,経済持続を目的としたシステムにしなくてはなりません。本書は,その方法の一つが述べられており,共感すること大でした。

以下は印象に残ったところをピックアップしたもの。

  • 現代の日本において,個人の人生における所得水準,失業・貧困に陥るリスク,社会的ステイタスに大きく影響を与えるのは,「教育」「学歴」である。つまり,「教育」「学歴」こそが人生の社会保障の問題となっっている(24-25頁)。社会保障と教育は表裏一体である。
  • 二十代は自立に向けての試行錯誤の時期として見る必要がある(44頁)。この人生前半に対する教育的な社会保障として基礎年金制度の再編を提案する(98頁)。
  • 仕事・雇用の総量は限られているので,中高年層は仕事だけに生きがいを見いだすのではなく,自らは退いて限りある仕事の一部を若者に譲るという発想や実行が必要である(44頁)。
  • なぜ日本の社会保障給付が低くてすんだ理由は,①終身雇用型の会社・(核)家族という共同体による見えない(インフォーマルな)社会保障というべきセーフティネットがあった,②1970年代からから公共事業が雇用を通じての社会保障の機能を果たしていたことが挙げられる(52-57頁)。

これらは本書の前半部分です。本書では一貫して,この偏った富を平等に再分配することを主張しています。現在のシステムでは,教育・年金・医療・福祉など様々なほころびが見えつつあります。そこにお金を集めて,再分配することが今後必要とされるでしょう。