- 作者: 三浦展
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 新書
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三浦展氏ばかり読んでいるなあ。でも,本書はタイトルから内容がよく分からないため,そのなかでも売れなかったほうではないかと思われますが,さまざまな意味で面白い内容でした。
「ファスト風土」という語感から,すぐに内容を理解しづらいのが,その原因でしょう。また「下流同盟」という言葉も,意味がとりにくい。タイトルに理解不能の言葉が二つもあるのでは…。
「ファスト風土」とは,「大型店の出店規制が緩和された近年,日本中の地方の郊外農村部のロードサイドに大型商業施設が急増し,その結果,本来固有の歴史と自然を持っていた地方の風土が,まるでファストフードのように均質なものになってしまった」(本書,13頁)ことをいう。つまり「ファストフード」と「ファスト風土」を引っかけているのですね。もっと,新しい用語を考えるべきでしょうね。
本書は,そのファスト風土化のどこが問題なのか,環境・エネルギー問題,自然と社会の四重の破壊,消費優先の価値観,24時間化の弊害=生活の不安定化,地域社会の流動化・匿名化・液状化・再魔術化される世界,人間も大量生産品に見える,自閉的な私生活主義と青少年の社会化の阻害,体力の低下と下流化,地域アイデンティティの危機とそれに代わるナショナリズム,ワーキングプアの増加,自由主義の民主主義に対する侵害などのキーワードを用いて解説しています。
それらの社会の変化が顕著に現れたのが,アメリカであり,その実情を取材し紹介しています。その無気力製造社会ぶりは,ある種の自由感を感じつつも,あまりの透明感と無透明感にホラー小説に見られる,ある種の恐怖感を抱かせます。それとともに,ファスト風土化に抵抗したフランスの例を最後に挙げています。