hoshi-itsu’s 本にまつわるblog

「ほしいつ」です。海外ミステリが中心のブログです。下書きがなくなってしまったのが悲しい……。

『流れよわが涙、と警官は言った』フィリップ・K・ディック,友枝康子訳,早川書房,1974→1989(○)

流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)

流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)

 ディックの中期〜後期にあたる代表作といわれている作品。ディックの他の作品と同様,いまここにある現実が現実なのか不安にさせてくれます。

 テレビのパーソナリティをし,歌手であり,一時間のテレビのバラエティショーをもっているスター,ジェイスン・タヴァナーは,罠により50本の食餌管をもつゼラチン状の軟体動物に襲われ気を失い,病院に運ばれた。目を覚ますと,病院ではなく,見知らぬホテルの一室だった。しかし,事務所や知り合いに連絡をとろうとしても,誰もタヴァナーことを知らないという。また身分証明書も失い,出生証明書を再発行してもらおうとセンターに連絡をとるも,出生登録がないという。タヴァナーは存在しない世界になってしまったのだ。警察に追われることになったが,偽のIDカードの作製を依頼して,どうにかこの世界からの脱出を図るタヴァナーだが…。

 ディックのなかではストーリーに整合性があり,タヴァナーが存在しない世界になった理由が一見タヴァナー自身が薬を服用したことによるものと読者に思わせておいて,実は別の女が薬で見た世界だったという話など,(SFにとっては常識的なのかもしれませんが),ニヤニヤしてしまいました。