ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『コウモリは夕方に飛ぶ』A.A.フェア、田中小実昌訳、早川書房、1942→1984(○+)

コウモリは夕方に飛ぶ (ハヤカワ・ミステリ文庫 4-8)

コウモリは夕方に飛ぶ (ハヤカワ・ミステリ文庫 4-8)

■ラムの姿が現れない

 バーサ・クール&ドナルド・ラム・シリーズ第7作目。前作『梟はまばたきしない』で太平洋戦争のため軍隊に入隊したところで終わりましたが、本作はその続き。バーサが、ドナルドに電報を打って、それを読んだドナルドが推理をして、失踪人探しの依頼と殺人事件の解決に挑む。変形アームチェア探偵物です。

 バーサと秘書のエルシーしかいない探偵事務所に、盲目の老人が若い女性を捜して欲しいという依頼をしてきた。毎日、路上で座っていると声をかけてくれる若い娘がいたのだが、ちょうどその交叉点で自動車事故にあい、運転手の男に病院に連れて行かれたという。その翌日から、その娘が声をかけてこなかったので、心配になった、だから探して欲しいとの依頼だった。簡単に解決する依頼で、断ろうとしたが、なんと100ドル払ってくれるという。

 さっそく引き受けたバーサは、広告をうったりして、娘ジョセフィン・デルを見つけた。しかし、その事故にからんで、ペテン師が現れて、保険会社から金をとろうという。その後、その盲目の老人の家に報告に行くと、そのペテン師が罠で仕掛けられていた銃で撃たれて殺されていたのだ。容疑者になったことをさとったバーサは事の次第をドナルドに電報で伝えた。ドナルドの返信は、意外なものだった…。

 軽い私立探偵小説の見本のようなスピーディでテンポのよいストーリー、読者をニヤリとさせるコメディ調の会話、それでいながら古典的なトリック(一人二役)で非常に楽しめました。