ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ギャルトン事件』ロス・マクドナルド、中田耕治訳、早川書房、1959→1982

 リュウ・アーチャー・シリーズ全18作中第8作目の中期の作品。文庫化されてなく、ポケミスでのみ出版されています。なんといったらよいか、ロス・マクには外れなし、という感じがします。暗いのですが、横溝ばりのトリックが炸裂しており、☆☆☆☆★です。

 私立探偵リュウ・アーチャーはギャルトン家の弁護士であるゴードン・セイブルに20年前に失踪した男を捜すよう依頼された。その男は富豪の未亡人マリア・ギャルトンの息子アンサニイ・ギャルトン。彼は、当時22歳で自分の結婚をめぐって双方の意見が合わず、自らの意志で家を出たのだという。マリアは身体の調子が悪く、残り少ない命だとかかりつけの医師がいうので、せめて死ぬ前に再会し話し許してやりたいし許して欲しいというのだ。

 セイブル家の召使いピーター・カリガンが刺殺された。カリガンを調べてみると、ギャングの一味などがつける刺青のマークが手についていた。アーチャーはカリガンがもっていた昔に愛を交わし別れた女に、カリガンについて調べるために会いにいった。

 一方、アーチャーは、アンサニイが大学生の頃ジョン・ブラウンという名義で寄稿していた詩の同人誌の編集をしていたチャド・ボォリングに会い、アンサニイについて聞いた。彼には息子がいたという。その地域の医師にかかったかもしれないと推理したアーチャーは、当時の医師ダイニーンを捜し当てた。彼によると、なんとアーチャーが訪ねてくる直前にジョン・ブラウンの息子を名乗る男が訪ねてきたところだという。また、5カ月前に区画整理中に殺されたと思われる人骨が発見されて、それがジョン・ブラウンではないかと考えているという。

 アーチャーは訪ねてきた若者を捜し、聞いてみると自分はジョン・ブラウンの息子で、4歳の時に孤児院に預けられ、それ以来両親に会っていないというのだ。こうしてカリガン殺人事件、ブラウン・ギャルトン殺人事件、ブラウン・ギャルトンの息子の出現、ぎゃんだんとの関連など、計画されていたのではないかと疑うアーチャーだが…。