ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『相棒 Season 7』「第15話 密愛」

 右京の大学時代のフランス文学の恩師で、フランス文学の翻訳家である、高齢の女性の宇佐美は、田舎の別荘地に住んでいる。彼女は、右京を呼び出し、5日前に別荘の密室の離れ小屋で服毒自殺した榊という男の近親者を捜すように依頼した。

 中年男性の榊は、他人の保証人になったため借金をこさえ、宇佐美の別荘の近くで行き倒れになったところを宇佐美が助け、榊を別荘の管理人として雇って離れ小屋に住ませていた。

 免許証から以前、榊が働いていた事務所の近所に聞き込みをしたところ、榊は自殺するような人物ではないというのである。そこで右京は殺人ではないかと宇佐美に主張するのだが、宇佐美は自殺した離れ小屋は密室だったから殺人だと主張する。

 榊のベッドの上にあった、愛の言葉について片仮名で発音表記が記入されていた宇佐美訳のフランス文学の文庫本、盗聴器が仕込まれていた万円筆から、右京は榊が宇佐美に恋をしていたのではないかと、宇佐美に妄想めいた推理を続ける。「恋の炎に燃えたフランス文学の研究者がウブな乙女だったとしたら?」「恋が出来ない理由があったとしたら?」「2人は恋に落ちたとしたら?」「彼女にとっては夢にまで見た恋だったとしたら?」「今まで愛されなかった私が愛されるわけがないと考えて、盗聴器を仕込んだとしたら?」「そして、男の本性を知ってしまったとしたら?」「ブレンドされたハーブティは、彼女が彼に毒を飲ませるためのものだったではないかとしたら?」

 それを知った女は男を毒殺する――。「何故密室ができたのか?」「男が女を殺人者にさせないため、苦しみの中で、ドアの内側から鍵をかけたのでは?」「しかし、男は毒を入れていなかった」

 騙しによる殺人かと思われていたが、愛による殺人というつまらない展開。アガサ・クリスティだったら違った結末にしていただろう。脚本家の新しいことをしたいという意欲は理解できるのだけど、結局平々凡々のストーリーとなってしまった。もっと複雑なストーリーにすべきだったのではないか。☆☆といったところ。