ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹, むー、富士見書房、2004

 桜庭一樹氏の出世作。私も本作を書店で見て、作家の名前を記憶したものです。しかし、なんとなく拒否感があり、今まで手にとらなかったのですが。ちなみに、本作を読んだ後ですが、『赤朽葉家の伝説『私の男』などには手を出す気にはなれないなあ。別に作品自体が悪いわけではなくて、私に合わないというだけなんですが。

 二学期、十三歳で中二の学生の山田なぎさが所属するクラスに、芸能人の娘で美少女の海野藻屑が転校してきた。海野は自己紹介で「私は人魚」といったり、なぎさに向かって「ほんとの友達を捜しにきたの」という、ちょっと空想癖が強そうな不思議な少女だった。なぎさは、引きこもりで通販で買い物を続ける美少年の兄の山田友彦に海野藻屑のことを話すと、友彦は海野のことを「砂糖菓子の弾丸」という。

 舞台は海に近く自衛隊の基地が近くにある地方都市。なぎさは、そんな何もないところで、「実弾」を欲しがっている。藻屑は、なぎさにどういわけか、絡んでくる。しかし、なぎさが学校で飼っているウサギが何者かに首を切られて殺されてしまうなど、日常に些細な変な事件が起こってしまう――。次第に藻屑とその家族について、噂が流れる。

 発表当時は、テーマがテーマだけに斬新さがあったのだと思うけど、今読んでみると、意外とシンプルなストーリーだと感じる。もう少し、凝ってもよいのではないか。それが『赤朽葉家』なのかもしれないけど。☆☆☆というところ。それにしても、あの無駄のない文体から、あのような可愛らしいイラストになってしまうとは、恐ろしいぜ、ライトノベルの世界は。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)