カー52歳のときですので中期〜後期の作品。ウィルキー・コリンズが残したあらすじをモチーフにしている密室もの。
クイーンズ大学の英文学教授のマーク・ルーズベンとその妻のブレンダは、5年間の結婚生活を経て、その関係は危険な時期となっていた。ある日の夜、ブレンダはマークに対して、友人のフランク・チャドウィックと愛し合っている、これから会いに行く、あなたとの愛はなくなったと告げたところ、マークも同じだと返事をした。そのためブレンダは出かけてしまった。
そのあと、歴史学教授のサミュエル・ケントの息子のキャロライン・ケントとその婚約者のトビー・ソーンダーズがマークを訪ねてきた。大学で2件の殺人未遂事件が起き、父のサミュエル・ケントが調査依頼を受け、トビーはそれらの事件はいたずらに過ぎないのではないかと思い、マークに相談にきたという。さらにトビーは、そのいたずらの犯人は、近辺に住んでいる見知らぬ男と逢い引きをしているローズ・レストレンジという女だというのだ。
そんな話をしていたところ、ブレンダが屋敷内にいるところを見かけた。その後マークの屋敷に、ローズがウィルキー・コリンズの本を借りるために訪ねてきたのである。ローズが本を借りて屋敷を出た後、ブレンダは今度はマークとローズの関係に疑いをもって、マークを責めたが、マークはローズと関係はないと否定し、それに憤慨したブレンダは再び家を出てしまったのである。
次の日の朝、マークの元にローズのコテージで何らかの事件を示唆する匿名のいたずら電話がかかってきた。ローズのコテージで行くと、密室である寝室で三面鏡の前でスツールに座って弓なりにのけぞって、心臓に探検を刺して死んでいた。いったい、ローズは自殺なのか?
冒頭から、登場人物の設定などの説明がまったくなく、三人称のドラマが始まってしまい、人間関係がどうなっているか理解するまでに何度も読むはめになってしまった。おそらく同時代に原文で読んでいる読者にとっては自明のことなんだろうけど。殺人事件そのものも、密室であったため、自殺なのか、他殺なのか、分からないストーリーになっている。その殺人もウィルキー・コリンズの本の内容に沿ったものとなっているけど、サスペンスにさほど効果を挙げている感じがしない。何度も繰り返すけど、僕の理解力がないためだと思う。その上であえて評価すると、☆☆☆といったところ。
- 作者: ジョン・ディクスン・カー,高橋豊
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1982/05
- メディア: 文庫
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