ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『光る指先』E・S・ガードナー, 高橋豊訳、早川書房、1951→1986

 弁護士ペリイ・メイスン・シリーズ全82作中37作目の作品。

 脊髄損傷の女性の看護ケアをするために雇われた看護婦ネリーが、ペリー・メイスンのもとへ、殺人を防ぐにはどうしたらよいかという相談で訪れた。ネリーは、自分の雇い主であるベインが、500ドルの報酬で障害者のベインの妻エリザベスを毒殺するように依頼をしたというのだ。彼女の話の内容に怪しいものを感じたメイスンは、報酬として1ドルを提示し、ネリーを追い払ってしまう。

 しかしその翌日、ネリーはベインに宝石の窃盗の疑いで告発されてしまった。ベインは偽の宝石をしまってある宝石箱に光る粉末を振りかけておいたところ、偽の宝石がなくなるとともに光る粉末がネリーの指先についていたというのだ。ベインがネリーを陥れるために罠にかけたのではないかと疑ったメイスンは、ネリーが無実であるという弁護にたって、容疑を晴らした。

 後日、今度は、エリザベスの妹のビクトリアがメイスンの元へ訪れ、ベインがエリザベスの財産を目当てに殺そうとしているので、エリザベスの遺言執行の代理人になってほしいという。メイスンは、エリザベス本人に会いたいと保留したのだが、翌日なんとエリザベスが砒素中毒で毒殺されてしまった。いったい毒を飲ませたのはベインなのか?

 一方、ベインから受け取った史談金をもって、遠くニューオリンズに行ったネリーをメイスンは追いかける。ネリーはエリザベスにアスピリンを渡したというのだが…。そのアスピリンを調べてみると…。

 これも、先日のフェアの『馬鹿者は金曜日に死ぬ』、アルテの『カーテンの陰の死』と同様に、殺人を知った一般人が、警察に訴えたものの根拠泣きはなしに断られたため、探偵へ依頼をしたところから始まります。この探偵へ依頼する動機というものにリアリティをもたせるのは難しいので、このような設定が定番化されているのですね。

 アスピリンを渡したのはどのようにして行ったかが謎といえば謎です。フーダニットというよりもハウダニットであり、いかにメイスンが犯人を追いつめるかというところに焦点が当てられており、推理的要素は多くありません。前半と後半で2つの事件について裁判が行われるなど、テンポはよいです。私の好みではないので、☆☆☆というところです。

光る指先 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

光る指先 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

光る指先 (1957年) (世界探偵小説全集)

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