ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『日本辺境論』内田樹,新潮社,2009

 内田樹先生による日本人論。一読して、うーんと唸ってしまいます。その通りかもしれないと同意するけれど「だったら一体どうしたらいいっちゅうねん」と困惑してしまいました。なぜなら、日本人の考え方は効率的なのだからそのままでよいのだと言っているのですから。おそらく、多民族との差異を考えるときに必要になるのでは。本書で内田先生は「辺境人」のことを以下のように定義しています。

 ここではないどこか,外部のどこかに,世界の中心たる「絶対的価値体」がある。それにどうすれば近づけるか,どうすれば遠のくか,専らその距離の意識に基づいて思考と行動が決定されている。そのような人間のことを私は本書ではこれ以後「辺境人」と呼ぼうと思います。(44ページより)

 いかがでしょうか。なんとなく身に当たるような当たらないような感じがしないでしょうか。内田先生は例えば,アメリカとの外交でどうして「アメリカが国益を損なう要求をしてくる場合」に日本人が「やはり日米同盟しかない」という異常な判断が成り立つのか,「おのれの思考と行動の一貫性よりも,場の親密性を優先される態度,とりあえず「長いものに巻かれ」てみせ,その受動的なありようを恭順と親しみのメッセージとして差し出す」のか,などから,日本人は辺境人であり,その思考法に基づいて生きているのであり,それは文化的に正しいし今後もそのような覚悟をもって生きていくしかないのだと述べています。

 しかし、何となくなのですが、「古い」感じがするんですよねえ。クラシックといってしまえばその通りなんですが。高齢世代には当てはまるけど、若年世代には当てはまらないという感じがします。例えば現代の若年者をコミュニケーション能力がないといいきってしまっているような。根拠はないのですが…。

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)