右京と環はマジシャンのミスター・アキのマジックショーを見に行った。そのショーで真っ暗になる舞台上にドサッという音が響き、ライトがつくと死体が転がっていた。その死体は、アキの弟子の澤田という男で、掌に三本の切り傷があった。そのマジックは瞬間移動と題する黒い布が降ってきてアキを覆い隠しアキは消えるもので、澤田はその黒い布を落とす役割を担っていた。舞台上ではペンタルライトが落ちるのが見えなかったことなど、不審に感じた右京は捜査を行う。
澤田はアキの住み込み弟子で、その家にはアキの妻の秋川かなえ、息子の高校生のはじめが住んでおり、二人に話を聞く。澤田の所有品にボールペン型のICレコーダーがあり、その中に澤田と秋川の妻が付き合っていたことがわかる。澤田のケータイ電話に登録されていた東都リサーチを調べると、別れさせ屋として田中を秋川の妻に近づけた、その依頼人はアキではないかと右京は推理するのだが……。
また、田中は4年ぶりの弟子だったこと、前の弟子も転落死していたこと、その事故当日になくなったトランプは田中が持っていたものと同じだったこと、トランプについていた指紋ははじめのものだったことがわかる。「ないものをあると見せかけるのはマジックの基本」と右京は犯人のトリックを暴く。
まあまあの「相棒」らしい出来で満足。☆☆☆★というところ。序盤の展開の速さ、犯人の動機が犯人像に結びついていること、登場人物が少ないのもよいね。トリックそのものは、落とし穴+転落死、罠を他の者が気づいて犯罪をやめさせようとして、その他の者が疑われるなど複合していて考えられています。しかし、もっと冒険してもよいのでは。例えば、右京と神戸が特命係の部屋から一歩も出てこない推理だけのアームチェアディテクティブストーリーとかね。