弁護士パトリック・バトラーが主人公でかつフェル博士が登場する謎解きミステリ。カーの書く主人公でバトラー弁護士がいるというのを本書で初めて知ったのですが、バトラーはフェル博士やHM卿のような謎解き中心の役目ではなく、行動を起こし裁判で勝つという、どちらかというとペリイ・メイスンに近いキャラクターでした。
内容はというと、裕福な老婦人が毒殺され、その容疑者として逮捕された秘書のジョイスを弁護するバトラー。毒を混入するアリバイがあるのはジョイスのみであり、毒の入ったコップにはジョイスの指紋しかなかった。しかし、バトラーはジョイスの無罪を勝ち取った。その理由はその老婦人の姪の夫が殺されたからであり、ジョイスにその殺人の機会はなかったからだった。そこで、この連続殺人事件の捜査を始めるバトラーだが、フェル博士の情報からここ3ヶ月の間に9つの毒殺事件が起こっているとのことだった……。『「模倣犯罪だよ、きみ」と、バトラーはせっかちにいった。「よくある話さ」』。
一読しただけでは、「いったい何だこれ?」とあまり理解できませんでした。というのは、最終的に根本的な解決になっておらず、またバトラーの犯人の指摘があまりにも荒唐無稽なため解説を披露している間、これが犯人ではなく犯人を油断させるために架空の推理をでっちあげているのだな、この後どんでん返しが来るのだろうと期待していたら、それが真犯人だったわけで。それでまあ、恥ずかしながら他のサイトの感想と解説を読んで、それから再読してようやく内容を理解した次第。うーん、これがミスディレクションとしてでしたら、一応成功しているとは思うけど、読者は納得しないよと悔しさ半分でしたが、それもアリかなとも。でも、まあ犯人を当てさせないという執念が見えて読む価値がありだと☆☆☆★というところです。
- 作者: ジョン・ディクスン・カー,斎藤数衛
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1982/03
- メディア: 文庫
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