表4の本書紹介文には、「ポケミスの新時代を担う技巧派作家の登場! アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補作」とありますが、同じポケミスの『記者魂』にかっさられてしまいましたね。でも、これはいいよ。本当に。私の好み。デイヴィッド・ハンドラーのホーギーシリーズのファンには、その続編が帰ってきたようでたまりませんよ。また、この作家はミステリ好きで、さらにアニメ好きのようで、随所にアニメについて言及されています。
雑誌のポルノのコラムや実用書などのフリーランスのライターをしたあと、SFやミステリ、ヴァンパイアなど23の小説を20年間にわたって書いてきた「売れない小説家」のハリー・ブロックが主人公。仕事がないときなど、女子高生の家庭教師をしていたり、糊口をしのいでいたのだけど、連続殺人犯で死刑囚のダリアン・グレイが告白本を書いてくれないかと依頼してきた。
躊躇したがハリーはグレイに会って、自分のファンであることを知って引き受けることにした。ダリアンの弁護士、ダリアンに殺された被害者の関係者、ダリアンのファンなどにインタビューを行った。そうしたら、ダリアンのファン4名が次々と腹部を切り裂かれたり全身の皮をはがれたり四肢が切り取られたりなど、惨たらしい姿となって殺されたのだ。直前に取材をしたため、容疑者となったハリーであるが……、銃撃を受けてしまった。さらに、グレイは連続殺人犯ではないかもしれないというのだ。真犯人はいったい誰なのか?
語り口は平易で、主人公のキャラはセンシティブだけどほんのちょっとの勇気があって、実に平凡だけど好ましい。他のキャラも、たとえば女子高生のクレアやストリッパーのダニエラなどの嫌みがなく魅力的です。トリックそのものも悪くはない。まあ、名作というわけではないけれど、偉大なるB級作品として、☆☆☆☆というところです。
- 作者: デイヴィッド・ゴードン,青木千鶴
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/03/10
- メディア: 新書
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