ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『カラスは数をかぞえない』A・A・フェア, 田中小実昌訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,1946→1962.

 バーサ・クール&ドナルド・ラム・シリーズ全29作中10番目の作品。この前に読んだブロックの『皆殺し』は面白いことは面白いけど、期待していた展開ではなかったので、欲求不満解消のために、久々にフェアを手に取った次第。それにしても、A・A・フェアと検索しても、まったくヒットしないなあ。誰も読んでいなのでしょうか。寂しいものです。

 莫大な遺産を残したコーラ・ヘンドリックスには、2人の遺産相続人がいた。1人はコーラの従妹の娘のシャーリイ、もう1人がコーラの親友の息子のロバートで、2人は25歳になったときに遺産を受け取ることができるようにになっていた。2人の遺産管理人はハリーとロバート・キャメロンといい、今回のバーサ&クール探偵事務所に来た依頼人はハリーだった。

 ハリーの依頼は、シャーリイが金に困っている様子もないのに、コーラの高価なエメラルドのペンダントを宝石店に売っていたことがわかったので、その理由を調査してほしいというものだった。ラムは調査を進めるうちに、ロバート・キャメロンが刺殺されているところを発見した。そこには22口径の拳銃が撃たれたあともあって、犯人の目的がわからなかった。

 設定・話が複雑で、遺産トラブル、なくなったエメラルドを探すこと、過去の出来事が展開されて読み進むうちに、じつは別の古典的なトリックがしこまれた作品でした。コロンビアの鉱山のこと、宝石のことなど、さまざまなことが絡み、ラムはその度に新しい推理を展開します。それでも、まあ、☆☆☆というところです。訳者の田中小実昌はあとがきで、登場人物の年齢がシリーズが進んでも整合性がないところが良いなと記しているのみで、ストーリーについて全く触れていませんでした。

『嘘から出た死体』A・A・フェア, 田中小実昌訳、早川書房、1952→1961はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20111003

『馬鹿者は金曜日に死ぬ』 A・A・フェア、井上一夫訳、早川書房、1957はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20090714

『コウモリは夕方に飛ぶ』A.A.フェア、田中小実昌訳、早川書房、1942→1984はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20080618

『梟はまばたきしない』A・A・フェア,田中小実昌訳,ハヤカワミステリ文庫,1942→1979はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20080114