ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『消えた装身具』コリン・デクスター, 大庭忠男訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ, 1991→1992

 コリン・デクスター9作目の作品。訳者あとがきによると、コリン・デクスター自身がテレビ映画用に書いたオリジナルストーリーをもとに小説にリライトしたものらしい。かなり内容を改変しているとしているけれど。読み終わった後、そのように言われてみれば、これまでの作品とは少し変わったものといえるかもしれません。ラストシーンをはじめ、映像用に読者サービスをしている感じが、なんとなくクリスティの作品を感じさせるのです。

 ロンドン−ケンブリッジ−オックスフォード−ストラットフォード−バース−ウインチェスターを案内する英国“歴史の都”観光ツアーには、夫婦3組を含む27人が参加していた。その中の老婦人のローラ・ストラットンは疲れを癒すためホテルの部屋で休んでいたところ、夫のエディに心臓麻痺で死んでいたところを発見された。ローラのハンドバッグがなくなっていたことなどから、モースは病死でなく殺人事件と考え、ツアーのメンバーのアリバイを探った。

 ローラはハンドバッグの中に金細工の工芸品であるウルバーコートの装身具を持っており、この旅行では、それをオックスフォードのアッシュモーリアン博物館に寄贈するつもりだった。その翌日、その寄贈先のアッシュモーリアン博物館の職員のシオドア・ケンプがチャーウェル川で溺死体で発見された。モースとルイスは、シオドア・ケンプの妻のルイスにケンプのことを聞きに行ったのだが……。

 クリスティに似ていると記しましたが、殺人現場から盗まれたと思しき高価な装身具、一見無関係に見える二つの殺人がどのように結びつくかが犯人逮捕の鍵になっていること、そのミスディレクション、ある有名な作品に類似する犯人像、それでいて、その作品から派生する一バリエーションであり成功例となっていることなどから、☆☆☆☆ですね。少なくとも、『オックスフォード運河』よりは面白かったですね。

 それにしても途中、水の中を探索している者として「フロッグマン」とそのままカタカナ語に翻訳されていますが、潜水夫なんでしょうね。ポケミスから文庫になったときは変更しているのでしょうか。私としては、フロッグマンと聞くと、たけしのオールナイトニッポンをどうしても思い出してしまうのでした。

消えた装身具 (ハヤカワ ポケット ミステリ)

消えた装身具 (ハヤカワ ポケット ミステリ)

『オックスフォード運河の殺人』コリン・デクスター, 大庭忠男訳, ハヤカワ・ミステリ文庫, 1989→1996はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20120311/1331485933
『謎まで三マイル』コリン・デクスター, 大庭忠男,早川書房,1983→1993はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20100826/1282833794
ジェリコ街の女』コリン・デクスター,大庭忠男訳,早川書房,1981→1993はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20100326/1269624925
『ニコラス・クインの静かな世界』 コリン・デクスター、大庭忠男訳、早川書房、1977→1990はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20090621/1245598877