ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『シャッター・アイランド』デニス・ルヘイン, 加賀山卓朗訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,2003→2006

 デニス・ルヘインのサスペンスミステリ。わたしはルヘインは初読。探偵パトリック&アンジーシリーズは書評を読んで自分向きではないと思ったのですが、それでも最近第1作目を読み始めたところ、薄く細い書体のため見づらく最初の数頁で断念しました。目の調子が良くなったらもう一度チャレンジするつもり。『ミスティック・リバー』は映画を見てしまったので、まあスルーしても良いかも。

 さて本作は、一種の孤島ミステリと聞いて手に取りました。先日、この夏に長崎の軍艦島に観光に行き、孤島に建つ精神病院が舞台でしたので、軍艦島を想定して読み始めました。

 お話は、1945年、連邦保安官のテディ・ダニエルズとチャック・オールは、マサチューセッツの沖の南北戦争では捕虜収容所だった孤島にある精神病院に船で渡ったところから始まる。精神病院の患者のレイチェル・ソランドが夜中病院を脱走したので、捜査に向かった。レイチェルは夫を戦争で亡くし、3人の子どもを溺死させたが、まだ生きていると信じていた精神障害患者であった。

 現場を伺ったところ、レイチェルの部屋は鋼鉄のドアで鍵がかけられており、脱出する窓もなく、まるで壁を抜けて蒸発したかのようだった。部屋にはレイチェルが書いた「4の法則」で始まる数字の暗号めいたメモが残されていた。一体どのようにして脱出したのか? この捜査の過程で、テディは2年前妻のドロレスを火事で亡くしていたが、その放火犯がいることがわかって、テディは次第に目的を変えていった……。

 さまざまなエピソードと事実が次第に読者を迷わせるミステリです。わたしは何が事実か事実ではないか、あいまいな描写が続いたため、なんとなく作者の企みがわかってきました。そこがリーダビリティを阻害しているため、ラストシーンに意外性があるものの、☆☆☆★というところです。

シャッター・アイランド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

シャッター・アイランド (ハヤカワ・ミステリ文庫)