ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『錯覚学─知覚の謎を解く』一川誠,集英社新書,2012

 「体験された内容と実際とがことなることは、総称して錯覚(illusion)と呼ばれる。また、視覚に関する錯覚は錯視(visual illusion)、事柄についての認識が客観的事実と異なることを錯誤(mistake)と呼ぶ」(6〜7頁より)。本書は、どのような錯覚があるのか、どうして錯覚が起こるのか、分類と分析をシンプルに示した入門書です。眼のもつカメラ的機能の問題、大脳による知覚の処理レベルの問題などさまざまな原因が考えられるとしています。

 例えば、第2章でも見たように、多くの幾何学的錯視は二次元画像の観察で生じる。二次元画像は、おそらくは三万年ほど前に私たちの祖先が絵画を描き始めて以降に私たちの生活環境の中に普及した、比較的新しいタイプの刺激である。三次元空間での観察で適応的な処理を行う知覚過程が、二次元画像の観察において、不適応的な知覚を引き起こしてしまったとしても仕方のないことだろう。(204頁より)

というところなど、二次元画像の処理は、三次元画像の後であることは興味深いですねえ。

錯覚学─知覚の謎を解く (集英社新書)

錯覚学─知覚の謎を解く (集英社新書)