ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『沈黙者』折原一,文春文庫,2001→2004

 折原一氏は1985年デビューですから今年でおよそ30年の作家生活。本作は、初期・中期・後期という分け方でしたら、中期にあたる作品ですかね。初期から一貫して叙述トリックを用いているのは変化がないのですが、有名なニュースからB級ニュースまで、実在の事件をモデルにした作品になってきてから中期になった気がします。本書は、軽犯罪で逮捕された者が自分の名前の黙秘を続けたというB級ニュースを素材の一つに扱っています。

 途中、誰かが誰かと同一人物で、ひょっとしたら○○がずれているのではないか、と思っていたのですが、そのとおりでした。しかし犯人はまったく当てることができませんでしたが。本書は謎解き小説ではありませんしね。けれどもミステリ的な魅力が満載のミステリであります。このような面白さそのものがオリジナルとなっており、☆☆☆★というところです。

沈黙者 (文春文庫)

沈黙者 (文春文庫)