森博嗣氏の第7作目の作品。前作の『幻惑の死と使途』と時間的に同時期で対をなす作品ですが、本作から森氏が少し変わったのではないかという印象を持ちました。前作までは純粋な物理的な謎解きミステリにこだわってきましたが、それ以外の要素を入れ込んできて、余裕をもったように感じます。中途で、『魍魎の筺』を読んでいたときの感覚が生じました(従って、そこがトリックなのではないかと疑ってしまいましたが)。
それと、森氏のこのシリーズを『F』と短編集以外を少しずつ読み進めていますが、初めて森氏の作品で、途中で「面白い」と感じました。途中まで三人称一視点がこれまでのシリーズと異なるキャラクターだったからでしょうか(実は私はこの2人の主人公があまり好きではない。というかリアルに感じないのです)。また、謎の提示の仕方がこれまでと異なっていて、誘拐事件・殺人事件・失踪事件の状況の矛盾さを提示しているのです。
メイントリックもミステリファンでしたら当然気がつかなくてはならないものでしたが、見事に騙されてしまいました。というところで☆☆☆☆というところです。森氏の作品をまず手につけるとしたら本作がよいのではないでしょうか。
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/01/07
- メディア: 新書
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