さまざまなミステリを書いた結城昌治氏の初期~中期の作品。解説によると1965年発行で50年経っています。
主人公は独身の31歳の沢井という刑事です。沢井は普段は真面目な刑事で、かつ、仕事のこと、女のこと、金のことなど、さまざまな闇を抱えています。ある製粉会社の社長とつきあいのあったが、その会社がその会社に恨みがある若い男に株券の買い占めで乗っ取りを宣言された。沢井はその男の弱みを握りに追いかけるが、思いがけず殺人を起こしてしまう。誰も見られていないことから、犯人をでっち上げようとしたのだが……。
ひとりの刑事が犯罪を犯すまでのクライムノベルなのですが、この背景がさんざん使われているため、少し退屈です。犯人の心理も、その後に発表された他の作品などと比べても少し弱い。時代に耐えられなかった作品と言わざるを得ません。☆☆☆というところです。