ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『刑事司法とジェンダー』牧野雅子,インパクト出版会,2013――性犯罪加害者の心理はどのようなものか

 性犯罪者の加害者の供述書をもとにした司法の問題点を示した論文を書籍化したもの。性犯罪加害者の心理がどのようなものか示していると思っていたのですが、事例が1つであるためか汎化は難しいなあと感じました。

 また、供述そのものが加害者の本心なのか、確信を得られない感じが、読んでいる途中に常に付きまとうので、これだけで推測したり断定したりするのはできませんね。あくまでの事例の一つとしてでしたら価値があります。

 加害者が自分のことばかり関心をもっていて、被害者のことを全く考慮に入れていないのがわかります。加害者の被害者に送る手紙には、「被害者に取り返しのつかないことをした」「家族に迷惑をかけて、自分はすべてを失った」「この罪を抱えて二度と繰り返さない」など同じ文句が並んでいる(129ページより)ということなんでしょう。たしか栃木のリンチ殺人事件も「被害者の分まで生きていきます」というようなことを犯人が供述していますしね。自分のことだけを考えているのでしょうね。そうでなければ犯罪を起こせませんしね。

刑事司法とジェンダー

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