大塚英志氏が漫画家を目指しつつ、徳間書店のマンガ雑誌の編集者のアルバイトに誘われ、2年間ぐらい働いていたときの、『アニメージュ』を中心にどのようにオタクの「評論」文化が作り出されてきたかを自身の経験や見聞きしたことを交えて語ったもの。あの時代の『アニメージュ』を読んでいた人なら誰でも一気読みできます。
ちなみに中学生だった私にとっては、『アニメージュ』は『風の谷のナウシカ』の連載だけを楽しみにしていた雑誌で、青年マンガ、少女マンガ、昔のマンガなど広大なマンガ世界をさまよっていたため(手塚治虫の『火の鳥』もその時出会います)、子供向けのアニメをそんなに夢中に見ておらず、そのほかの記事はほとんど読んでいませんでしたが、本書の内容はそんな人にとっても興味深いです。
タイトルの『二階』ですが、徳間書店のビルの2階に編集部があったため、そこに集まってきたアニメを評価する人々を住人を示しています。
確か、『アニメージュ』を創刊・初代編集長である尾形英夫氏の『あの旗を撃て!―「アニメージュ」血風録』で、その本が手元にないので正確ではないのですが、大塚氏のことを、たまにやってきて演説をして帰っていく変わった人物だったというように説明していたのを覚えていて、本書がその時代について書かれていて、しかも、なんとジブリの鈴木敏夫氏の要請で『熱風』で連載されたものとあとがきで読んで、書店で見つけてすぐに読み終わりました。
大塚氏は誠実でこの内容がすべて正しいと主張しません。タイトルに「私史」とつけるのはあくまでも自分の視点から見たものであるという主張です。大塚氏が見た以外の事実があるはずですし、大塚氏の解釈もすべてが正しいとは限りません。しかし、たとえば、上映会文化がオタクコミュニティを広げたのではないか、という論考は、「あの時代」の一面をするどく示していると思います。
二階の住人とその時代 転形期のサブカルチャー私史 (星海社新書)
- 作者: 大塚英志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/04/26
- メディア: 新書
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