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hoshi-itsu’s 本にまつわるblog

「ほしいつ」です。海外ミステリが中心のブログです。下書きがなくなってしまったのが悲しい……。

『企業不祥事の研究―経営者の視点から不祥事を見る』井上泉,文眞堂,2015

 11の事例研究を通して、企業不祥事とは何か、どのようにして防ぐのかを示した研究論文をまとめたもの。企業不祥事について大まかに知っておきたくて手に取りました。読み物ではなく、論文をもとにしているので、読みづらいのは承知のうえで読み飛ばしました。

 事例は、少し古いものから、大王製紙巨額借入事件、オリンパス粉飾決算事件、カネボウ美白化粧品事件など、割合最近の事件が多く挙げられてます。

 不祥事の当事者の心理プロセスをきちんと整理してあって、①罪悪感、②自己正当化、③会社への逆恨みを示しています(9ページより)。その原因は、会社内のモラルの低下を指摘しています。資料としては良い論文ですね。 

企業不祥事の研究 経営者の視点から不祥事を見る

企業不祥事の研究 経営者の視点から不祥事を見る

 

 

『職場がヤバい! 不正に走る普通の人たち』前田康二郎,日本経済新聞出版社,2016

 新聞の書評で取り上げられていて購入。作者はフリーランスの経理をしている人で、会社の不正といっても、横領などお金にかかわることが多いようです。

 会社や周囲への仕返しのために不正に走る人がいる、不正は見つけるものではなく違和感として感じるもの、プロの経理はやりそうな人がわかる、職場環境と個人的事情が不正の発生確率を高める、など面白いです。

 普通のサラリーマンが不正をやらかしてしまう心理の流れはどういったものなのか、がわかりますが、もうちょっと深いところまで追求してほしかった。筆者は不正をした人ときちんと話したことがないんじゃないかな。本書の内容は、どんな人も不正に手を染める可能性があるといっています。

職場がヤバい!  不正に走る普通の人たち

職場がヤバい! 不正に走る普通の人たち

 

 

『フリーで働く! と決めたら読む本』中山マコト,日本経済新聞出版社,2012/『フリーで働く前に! 読む本』中山マコト,日本経済新聞出版社,2013――フリーで働くをテーマにした書籍はまだまだニーズがあるのではないか?

 本書を手に取ったのは、漠然とフリーランス編集者になりたいと思っているけれど、フリーになったとしても仕事の依頼が来るという自信がなかったためです。技術・知識的にはニッチなものをもっているのですが、その需要とマーケットは小さいので厳しいのは見えている。

 そのような状態で『フリーで働く! と決めたら読む本』を手に取ったら、奥付に2012年5月発行で8月には8刷と記されています。3カ月で8刷でしたらバカ売れですからね。ニーズがあるということでしょう。

 内容ですが、この作者どこかで聞いたことがあるなあと思っていたら、ずいぶん前に書籍の帯を考える際に参考資料として、『「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本』を読んだことがありました。まんまと作者の策略に引っ掛かっていたんですねえ。この本はワークブック方式で当時実践しました。書籍の帯にしては変なリードだな、いいんだけどと言われましたね。今はやっぱりオーソドックスな帯がいいなと思って実践していないのですが……。

  でもまあ、本書によって少しはフリーランスになる勇気がでました。第2弾はあまり参考になりませんでしたが。

 類書があるかなあと思って、さんざん探したのですが、教科書・基礎知識系のみしかなくて、意外と書籍ではないんですねえ。まだまだニーズはあると思います。切り口を変えて面白い視点で書籍をつくれば売れるでしょうね。たとえば、事例集で、その事例集でも業種別にする、成功例・失敗例を時系列で示す。またワークブックでこれも業種別、といってもフリーランス・企業者別にする。あとQ&Aでもっと具体的に解説するなどですね。私がフリーになったら、そんな書籍を編集するんだけどなあ。

「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本

「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本

 

 

フリーで働く前に! 読む本

フリーで働く前に! 読む本

 

 

フリーで働く!  と決めたら読む本

フリーで働く! と決めたら読む本

 

 

『ヴェネツィアで消えた男』パトリシア・ハイスミス,富永和子訳,扶桑社ミステリー,1967,1997――先読みがことごとく外される

 ハイスミスの長編22作中の11作目の作品。この前作が『殺人者の烙印』、この後作が『変身の恐怖』でハイスミスが絶好調だった頃。といっても、リストを見ても不調だった頃ってないよね。本作もとても1960年代とは思えない現代サスペンスミステリ。先が読めない展開というか先読みがことごとく外される。

 画商のレイ・ギャレットは、自殺した妻のペギーの父であるコールマンと葬儀のあとにローマで会った。すると突然コールマンはレイを拳銃で撃って逃げ去った。幸運にも銃弾は皮膚を少しかすっただけで命に別状はなかった。しかしレイはコールマンを訴える気はないほど心が沈んでいた。ペギーの自殺の原因は本当に検討がつかず、それをコールマンがレイのせいであると納得していなかったからだ。

 レイは翌日気分を良くするためにヴェネチアにいって、それをコールマンの友人のイネズに伝えた。ヴェネチアでレイとコールマンとイネズは会って、コールマンはレイをペギーが手首を切って自殺をしていたにもかかわらず、女と会っていて見殺しにしたと責めた。レイはペギーは絵を描いていなかったが、落ち込んではいなかったと言った。

 さらに別の日に食事で会ってコールマンはレイを責めた。帰りにボートに乗ったところ、コールマンはレイを体当たりしてこぶしで顔面を殴って運河へと突き落として逃げた。コールマンはレイが死んだかもしれないと思った。しかしレイは泳いでぎりぎり生き延びることができた。レイは消えてることでコールマンを監視するように付け回すようになったが……。

 このあらすじを読んだだけでも、レイはコールマンに何度も会うのか不思議に感じるなど、どうしてそのような行動をするのか不可解なことが多くあります。そこを人物描写で納得させてしまうのがハイスミスの腕なのです。話はこのあと、レイがコールマンにしかけたり、コールマンがしかけたり、不思議な展開を味わうということで、☆☆☆★というところです。

 ハイスミスの作品で、河出文庫福武書店などさまざまな文庫で出版されていたため、何を読んでいて何を読んでいないのかわからなくなってきてしまいました。最初から読み直してもいいかもしれません。

ヴェネツィアで消えた男 (扶桑社ミステリー)

ヴェネツィアで消えた男 (扶桑社ミステリー)

 

 

『読者ハ読ムナ(笑)―いかにして藤田和日郎の新人アシスタントは漫画家になったか』藤田和日郎,飯田一史,小学館,2016――むしろ編集者が勉強になるガイドブック

 藤田氏と藤田氏の初代編集者の武者氏による漫画家を目指すアシスタントへのアドバイスをまとめたもの。

 新人賞を受賞した新人漫画家が編集者の紹介で藤田氏のアシスタントになったという設定で、藤田氏は若い漫画家が不足しがちであることをどのように吸収していくか環境の整備を含めて提示していきます。

 さまざまな視点で読むことができます。私としては、編集者のための本として読みました。編集者も新人マンガ家もコミュニケーションをとっていくのですが、それぞれの立場や経験が異なるため、同じ言葉でも受け取り方が異なってしまい、正しく伝わることができないという現象。それを師匠として編集者の言葉を若い漫画家に具体的に解説し指南していく藤田氏がみられます。

 もちろん、どのようにマンガを描いたらよいか、しっかりしたアドバイスもあり、非常に勉強になります。

 しかし若い新人漫画家がコミュニケーション能力が低いのは当たり前なのだから、出版社がコーチングなりカウンセリングなりの研修を受けて、適切なコミュニケーション技術を習得したほうが、解決が早くなるし、効率的になるし、才能を逃すことがなくなるのではないでしょうか。

 

『日本語の作文技術』本多勝一,朝日文庫,1982

 昔、読んだものを改めて読んでみて勉強になりました。読みやすい文章はどういうものか、正しく内容を伝えるにはどのようにしたらよいか、が具体的に書かれています。文章を書く人のとっても、編集者にとっても、気を引き締めなくてはならないことが書かれています。

 例えば「渡辺刑事は血まみれになって逃げだした賊を追いかけた」という例文に対して、文意をはっきりさせるために、読点を入れるのですが、それによって、意味が変わってしまうので注意しなくてはならない、と述べています。

日本語の作文技術 (1982年)

日本語の作文技術 (1982年)

 

 

『完全版水木しげる伝』水木しげる,講談社漫画文庫,2001,2005

 水木しげる先生の自伝。上巻が戦前編、中巻が戦中編、下巻が戦後編となっています。いままで水木先生が描かれたものの寄せ集め的な感じがしますが、こういう一冊にまとまっているのは良いことだなと思います。戦前の境港の様子であるとか、戦争のことであるとか、戦後のマンガ史の一部を垣間見ることができます。

 やっぱり戦中編がもっとも面白いですね。戦争というもの、組織というもののいやらしさがむき出しになっているので。上司が保身にまわって部下が被害にあう例が出てくるのがなんとも……。控えめにいって、一生のうち 一回は必読なのではないでしょうか。

完全版水木しげる伝(下) (講談社漫画文庫)

完全版水木しげる伝(下) (講談社漫画文庫)

 

 

完全版水木しげる伝(中) (講談社漫画文庫)

完全版水木しげる伝(中) (講談社漫画文庫)

 

 

完全版水木しげる伝(上) (講談社漫画文庫)

完全版水木しげる伝(上) (講談社漫画文庫)