hoshi-itsu’s 本にまつわるblog

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『廃墟ホテル』デイヴィッド・マレル,山本光伸訳,ランダムハウス講談社,2005(○)

廃墟ホテル (ランダムハウス講談社文庫)

廃墟ホテル (ランダムハウス講談社文庫)

 デイヴィッド・マレルは,映画『ランボー』シリーズ・第1作目の原作『一人だけの軍隊』の著者。その印象が強いためか,マレルのことを冒険小説家という印象が強いといわれる。かくいう私もその一人で,本書でマレルを初めて読みました。

 衰退しつつある都市で活躍している都市探検家たちがいた。人々は郊外に逃れ,古い大きな建造物は入居者もなく残される,ホテル,オフィス,デパート。どの建物に侵入しても,タイムマシンが何十年も前に連れ戻してくれたようだった。血友病であったオーナーによって建てられたパラゴン・ホテル。そのホテルは1901年に建造された豪華ホテル。しかしオーナーの晩年,誰にも進入できないよう金属板で囲われていた。新聞記者,歴史学の大学教授,その元教え子たちはそのホテルに興味をもつ。彼らは,解体が決定されたそのパラゴン・ホテルに侵入したのだが…。

 ホテルに侵入した彼らは,何故オーナーがホテルを金属板に囲い,誰も入ることができないようにしたのか,30年間そのホテルの内部で誰に知られることもなく何が行われていたのか,驚愕することになる。

 冒頭は,都市探検のマニュアル的な側面があり,中途から奇形の鼠や5本脚の猫が現れるなど幻想味が徐々に強くなっていく。次第に,暗闇とともに心身が飲み込まれていく様が不気味だある。しかし,どこかハリウッド映画調になっているのも否めない。また,途中から『金と銀』を読んだ人には馴染みのある話のようになっていくのも愉しい作品である。

 訳者による解説を読むと,「狂気や幻想に満ちた精神の揺らぎ」を書くことが,この作者の真骨頂らしい。そういわれてみると,『ランボー』も当てはまるかもしれない(映画だけで読んでいないんですが)。冒頭のエピグラフではジャック・フィニイリチャード・マシスンに捧げられている。