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『アヘン王国潜入記』高野秀行,集英社文庫,1998→2007(○)

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

 1995年,ゴールデントライアングル「黄金の三角地帯」,インドシナのタイ,ラオスビルマの三国が境を接するあたりに広がる,いわゆる麻薬地帯というところがあった。そのなかで 岐阜県と同じ大きさ「ワ州」では,全世界のアヘンの4割前後を生産しているしているいう。アヘンを持つ者が権力をもつ無法地帯――「善悪の彼岸」であった。

 著者は,ゴールデントライアングル内の村に滞在し,村人と一緒にケシを種まきから栽培しアヘンを収穫するまでを取材すべく,独立運動の有力者のコネでようやくワ州に向かった。本書は,7か月に及ぶその潜入記である。

 著者は,ビルマの「ワ軍」という反政府ゲリラの総司令官に会って,ケシ栽培を熱心にやっていて伝統的なワ州奥地のムイレ村を紹介される。そこの村人は中国人とワ人しか知らず日本人であることがわからないような人々であった。ケシの種まきに参加したり,写真屋と文字を書けない村人のための手紙を書く代書屋をしたり,ケシ畑の草むしりをしたりして,次第に村の中にとけ込む。果たして,そこでは純粋な農業としてのケシ栽培が行われていたのである。最後には,アヘンの効き目を体験し,ついには中毒になってしまうのだ。

 これらのことが,しっかりした文書で語られており,長い間文庫化されていなかったのが不思議に思うほど面白いです。