- 作者: マーガレットミラー,Margaret Millar,柿沼瑛子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1992/02
- メディア: 文庫
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アメリカのスリラー作家マーガレット・ミラーの中期〜後期(?)の作品(本作品はミラーの孫に捧げられています)。
ミラーは,いわゆるミステリマニアには評判が良いのですが,例えば夫であるロス・マクドナルドほどには広く一般には読まれませんでした。本国では,ロス・マクよりもミラーの方が評価されているらしいにもかかわらず。
それは彼女の作品の面白さのポイントが,翻訳ではあまり伝わらない質のものなのか,それとも日本人には受けないものなのか,判断がつきかねるところです。しかし,本作品を読んでみると,その両者にも当てはまるような気がします。翻訳ではあまり魅力が伝わっていないようなもどかしさを感じます(他の作家でいうと,ジョン・D・マクドナルドですかね)。
金持ちだけが集まるカリフォルニアの会員制社交クラブであるペンギンクラブが舞台。そこには,大統領に脅迫状を書くのが好きな老人,クラブに迷い込んできた9歳の小生意気な子ども,美貌の未亡人でその美貌を維持するために山羊の胎児の血漿を注射しているミランダ・ショー,退役海軍の老夫婦と30代になっても結婚せず奇妙な性格をもつ娘二人,クラブのマネジャー,プールの若い監視員などがいるのだが,ある日,プールの若い監視員と駆け落ちしてミランダ・ショーが失踪する。弁護士トーマス・アラゴンはミランダ・ショーを探す。無一文になりその若い男に捨てられたミランダは,老退役軍人のクーパー・ヤングの家に娘たちの教育係として雇われるのだが,クーパーの妻が殺されてしまった…。
改めて読んでみると,描写のみでストーリーの説明をほとんどしません。ですので,一度読んだだけではストーリーが呑み込めないのです。頭の中をぼんやりウロウロさせながら読んでいくと,ようやくストーリーの中身が理解できるという感じがします。これは原著では,物事の描写の仕方,登場人物のしゃべり方などで設定を容易に類推できるようになっているのでしょう。翻訳すると,それが抜け落ちてしまうのでしょうか。
ラストは,ちょっと唐突な感じがしますが,皮肉で意外なところがあり,ニヤニヤさせられます。