「イノセンス」公開時に編まれたアニメ雑誌等に掲載された自作アニメ映画に関する対談+エッセイ+インタビュー集。対談相手は、宮崎駿、大森一樹、安彦良和、今関あきよし、河森正治、光瀬龍、金子修介、今関あきよし、長部日出雄、池田敏晴、富野由悠季、本広克行、沖浦啓之、山田正紀など。とくに宮崎駿氏は、書簡のやり取りと3度の対談をしており、非常に面白い。
あとがきにも「その時々で言っていることが全然違う(笑)。ただ、いろんなことを信じてやってきたんだな、と思った。一貫して変わらないものが多少なりともあるなら、本としてまとまるかな、というのが実感です」と話しているとおり、一つ一つのことが、その時代を反映しており、ある種の時代の流れというものが読めます。そして、アニメについて、結構率直に述べています。
ところで私が変わらないものと感じたこととして、以下のようなことを言っているのが嘆息します。『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』公開1カ月後の1984年3月の対談です。
宮崎 こういう物質的に豊かで第3次産業花ざかりで、アニメーションは週35本もTVで放映されている状況なんていうのは、みんな遭遇したことがないんですよ。歴史でいうならローマの平和ですね。ローマ帝国じゃなくて、ローマ市内の状況に似ていると思う。政治的退廃とか見せ物としての殺し合いとか。(中略)
押井 そこで比喩的に言えば、そのローマ市民はパンとブドウ酒を要求したうえに、なおかつ闘技場での見せ物を要求することが市民の権利だと信じてきた。それはとりわけ、いまのアニメファンに似ていると思うんです。ファンの要求することは作品のなかで実現されなければならないと信じている。
宮崎 ええ、似てますね。
押井 そして、それが実現されなければ「裏切りだ」とくるわけです。そこで、彼らの要求を呑むのか、それとも仕事をやめちゃうのか、そのどちらかじゃないと思うんです。(59頁より)
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