ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『カーテンの陰の死』 ポール・アルテ、平岡敦訳、早川書房、1989→2005

 犯罪学者アラン・ツイスト博士シリーズの第3作目。

 冒頭で、あるオールド・ミスが「同じ下宿屋に住人が、殺人者と同じ目をもっている。おそらくもうすぐ殺人を犯すだろうから注意してくれ」と警察に訴えたが、警察は当然のごとく無視をした。しかし、ある夜中に公園で、二人いっしょだったそのうちの一人が、もう一人を刺殺し、被害者の頭の皮を剥いでいたのを、その下宿屋に住んでいる女が目撃した。女はこっそり犯人を追跡したところ、なんと犯人は、その女が住んでいる下宿屋の階段に頭皮を捨てて、その下宿者の中に逃げていったのである。

 その下宿者の住人は、新聞記者、ピアニスト、自称作家、引退した医師、オールド・ミス、盲目の元美容師など一癖も二癖もありそうな人ばかり。犯人は、その中の一人なのか? 

 さらに、数日後そのオールド・ミスが下宿屋に帰宅したところで、玄関とカーテンの間で背中にナイフを刺されて殺されたところが見つかった。その日の外は雪が積もっており、死体発見後すぐに外へ追いかけたところ犯人自身も犯人の足跡もなく、また玄関に面した廊下にも誰も目撃されなかった。いわば密室状態だったのである。二つの不可解な殺人事件に関連性はあるのか? ツイスト博士は警察に協力を求められ捜査を始める。

 このあと、下宿屋の経営者から、その経営者の曾祖母が75年前に同じように刺殺されていたと証言され関連性を調べます。そして、やはり下宿人の一人の過去をさぐると、トラブルを起こしていることがわかるわけですが…。

 密室トリックそのものは、まあカーの作品といってもいいほど、リアリティがあるんだかないんだか、犯人は一緒にいた人がちょっと階段に昇った一瞬のすきにナイフを投げて殺す、雪が降ったための偶然の密室の出現(これは推理していたのですが)、別の人間を犯罪者に陥れる連続殺人ですからね。それでも、そのバカバカしさも心地よく、最後のどんでん返しを含めて愉しめましたので、☆☆☆☆です。