ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『相棒 Season 8』「第6話 フェンスの町で」

 ある郵便局が単独で襲撃され強盗された。警察は、犯人のスムーズな行動に専門的な訓練を受けた者と判断した。しかし、犯行後すぐに設置した検問に引っかからなかったことから、犯人が逃げ込んだところは「フェンス」、つまり米軍基地の向こうと思われ捜査は中断される。

 右京は、単独犯であること、スタンガンを持っていたこと、血液に見せかけた赤い液体を発射するよう改造されたモデルガン、ハーフキャップのヘルメットだったことから、犯人はバイクで逃亡したのではなく、自転車で逃亡したのではないかと推理し、神戸と二人は調査を始める。サバイバルゲームのサークル名簿にあった15歳の中学生の未成年の土本に疑いをもつ。土本を捜しにいったところ、ちょうど同級生の男に暴行されているところだった。同時に土本の母親が息子が強盗犯であると通報したのである。

 逮捕された土本少年の慌てない態度に不審を起こす右京と神戸は、土本の教科書に書かれた爆薬の化学式をみて、尋問を行うと、彼の目的は教室を爆弾で爆発させて、その後の逃走資金として郵便局を強盗したというものだった。しかし、時限装置をつけていなかったことから他に目的があるのではないかと疑うのだが――。

 冒頭の郵便局強盗犯が逮捕されるまで20分ほどで、それ以降のめまぐるしい展開に、ようやく『相棒』らしくなってきた感があります。神戸は捜査に協力的に行動し、ほとんと薫と同等の役割を果たすようになって、ストーリーも展開するようになってきました。探偵物語には、情報収集する行動担当とその情報から推理する頭脳担当が必要ですが、右京に両方とも担当させることには無理がありますから、今後もっとそのようになっていくでしょう。犯人の犯行動機はあまり面白くないものですが、人物の役割の目くらましなど、なつかしいトリックも入っていて、☆☆☆というところです。