本書の著者は『別冊マーガレット』『花とゆめ』『LaLa』『ヤングアニマル』『MOE』などの編集長、編集担当役員をつとめた方で、自らの編集者としてどのように関わってきたか回顧したエッセイ風ノンフィクション。もっと詳細に知りたいと感じさせるぐらい面白い。白泉社が何故できたのか謎であったが、その経緯がしっかり書かれている。ありがちな編集者の独立などではないのですね。あのパイが膨張している時代だったからこそ、ありえたことだったのか、というのがわかります。
しかし、このめざましい24年組の活躍のかげに、私としては心を痛めることもあった。それは、マンガ家の中に筆を折りたい―マンガをかくのをやめたい、という人がでてきたことである。しかも、人気も実績もかなりある人もである。新しい会社で経験もなく若い担当に不満だったこともある。私も兼任など多くバックアップが不十分だったろう。
真意を聞いてみると、24年組のニューウェイブと比べて、自分の娯楽本位の作風がいやになったということらしい。私は、マンガというものは、あくまで楽しく、読者を面白がらせ、喜ばせるのが本道であり、その中に共感、感度を盛りこんでいけばよいのだ、ということを説いたのだが、自身そう失から回復できなかった。大ベテランの作家すら動揺があり、新傾向に近いテーマを狙った作品をかいたりしたが、あまり成功していない。(161〜162頁より)
など、所々に見られる編集者としての人柄と視点が面白い。
- 作者: 小長井信昌
- 出版社/メーカー: 西田書店
- 発売日: 2011/08/17
- メディア: 単行本
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